11号電探は海軍が大戦直前に開発した対空監視用電波探信儀で、海軍の電探1号機である。原型は使用周波数が100MHz、繰返周波数は1,000Hz、送信尖頭出力が5kwで、監視有効距離は編隊に対し大凡150kmであった。11号電探はその後、繰返周波数が500Hzに、尖頭出力は30kwに改修され、探索範囲は250kmに拡大したが、本機は性能に比べ大型・重量過大で前線への配備には不向きであった。このため、戦況の悪化に伴い移動が容易な12号(1号電波探信儀2型)・13号電探(1号電波探信儀3型)に取って代わられ、生産は百数十基で打切られた。装置概要本電探は空中線装置、受信機、送信装置、同期制御機、波形表示用指示器及び装置の回転機構等により構成されている。電探機材は回転機構上部に設置された電探室に装置され、電源・通信線の取込みは回転部分の接触式電環装置を介し行われた。空中線は電探室前面に装置された枠型構造物に張られた金網上に配置され、電測員は電動機を制御し電探室を左右に回転させ標的の探索を行った。また、標的波の追尾、微調整は電動機と併せ装置された手動ハンドルにて行い、最大感度方式により標的の方位・距離の2緒元を測定した。1号電波探信儀1型(改-1)緒元用途: 対空警戒配置場所: 沿岸、要地有効距離: 編隊150Km、単機70Km周波数: 100MHz帯繰返周波数:1,000 Hz(最大探索距離150km)パルス幅: 20μs送信尖頭出力: 5Kw送信空中線: 半波長ダイポール水平5列2段受信空中線: 半波長ダイポール水平5列2段送信機: 自励発振、電力増幅TR-593A x2(P.P.)変調方式: パルス変調、変調管TB-308C受信機: Wスーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段、(UN-954 P.P.)、第1検波(UN-954)、第1局部発振(UN-955)、第1中間周波2段(RE-3 x2)、第2検波(RE-3)、第2局部発振(Ut-6F7)、第2中間周波数3段(RE-3 x3)、第3検波(RE-3)、低周波増幅2段(RE-3 x2)中間周波数: 第1中間周波数21.5MHz、第2中間周波数3.5MHz帯域幅: ±250KHz総合利得: 120db以上信号表示: Aスコープ方式測定方法: 最大感度方式測距精度: 1-2Km測角精度: 2-3°電源: 3相200V交流電源重量: 8,700kg製造: 東芝・日本音響・住友11号電探各部概説「空中線装置」11号の空中線は電探室前面に装置され、送受信用空中線素子は反射効果を考慮した金網上に絶縁材を介し配置された。送受信用空中線は同一構造の半波長ダイポール水平5列2段で、上段に受信用、下段に送信用素子が配置され、中央には送信電波が受信機に回り込むのを低減させる金網製遮蔽板が取り付けられ、給電は並行2線式である。「送信装置」本装置は送信機(発振部・電力増幅部)及び衝撃波(パルス)変調機で構成されている。11号電探は開発1号機のため各部の設計は慎重で、送信機は発振・電力増幅方式を採用している。発振はレッヘル線同調回路で構成される三極管(管種不明)プッシュプル(P.P.)の自励式で、発振周波数は100MHz帯である。電力増幅部は同じくレッヘル線同調回路を使用した三極管TR-593A P.P.構成で送信尖頭出力は5kw、出力状態を監視するためにDC762Aによる検波器を備えている。変調機は同期制御機で発生させた繰返周波数1,000Hz、幅約30μsの同期用パルスを20μsに整形・増幅後、変調管TB-508Cに供給し、変調管は出力パルスで発振管のグリッドを制御する。「受信機」送信機と同様に受信機の設計にも配慮がなされ、このため、本機はWスーパーヘテロダイン方式であり、構成は高周波増幅1段、第1中間周波増幅2段、第2中間周波増幅3段、低周波増幅2段である。高周波増幅部はUN-954二本によるP.P.増幅方式、第1中間周波数は21.5MHz、第2局部発振回路は水晶制御方式、第2中間周波数は3.5MHzで帯域幅は±250KHz、総合利得は120db以上である。受信機前面パネルには第2局部発振回路の発振監視用電流計が装置されている。なお、本式の受信機は11号の改良機材である12号(トレーラー型)、21号(艦艇用)、11K(簡易型)に踏襲された。「同期制御機」本装置は15KHzの正弦波発生回路、周波数1/15低減回路、送信用同期信号発生回路、時間軸掃引用鋸歯状波発生回路、目盛発生回路等により構成されている。正弦波発生回路は水晶発振回路で作り出された15KHzを周波数1/5低減回路で3KHzに、次段の1/3低減回路で1,000Hzに変換し、基本信号として各部に供給する。送信用同期信号回路は基本正弦波を基に飽和回路で幅30-40μSのパルスを発生させ、送信機変調部に供給する。本パルスは変調回路で20μSに整形され、発振管のグリッドバイアスを制御する。鋸歯状波発生回路は基本正弦波1,000Hzに同期した鋸歯状波を発生し、掃引信号として指示器に供給する。目盛発生回路は主発振器で発生した15KHzの正弦波をパルス化し、一目盛り10kmの距離測定用マーカー信号を発生させ指示器に供給する。「指示器と測定」波形監視用指示器は信号増幅回路、掃引回路より成る静電式のオシロスコープで、探索用受信波及び1目盛10kmの測距マーカー信号を画面表示する。電測員は受信した反射波の振幅が最大となるように電探装置(空中線)を回転操作し、標的に正対する空中線の角度により方位を測定すると共に、距離測定用マーカーにより標的波を測距する。本土初空襲と11号電探1942年4月18日、米空母ホーネットより発艦したドーリットル中佐指揮のB-25爆撃機16機が本土(東京・名古屋・神戸)を初空襲した。この折り、勝浦に設置された11号電探1号機及び衣笠防空砲台に設置された2号機は十分な能力を持ちなが、東京・京浜地域に進入した敵機を探知することが出来なかった。同日朝6時30分、黒潮部隊の監視艇「第23日東丸」は本土東方650浬(1,500km)で敵機動部隊を発見し「敵航空母艦3見ユ」他の情報を30分に渡り打電し、7時過ぎに撃沈された。この電文は海軍軍令部を通じ各部署に知らされたが、攻撃機が航続距離の短い通常の艦載機であると前提し、本土空襲は早くても19日早朝と予想された。両電探局の対応もこの判断を追従したもので、結局飛来予想時間の誤や、爆撃機の進入高度が低かったため、電探による敵機初探知の好機を逃してしまった。概念図作成: 安原久悦殿