横浜旧軍無線通信資料館掲示板


    パスワード希望の方はメールにてご連絡ください。

    記事NO. 6204に返信をします

    [返信しないで戻る]
    会員パスワード: *必要
    おなまえ: *必要
    e-mail: *省略可
    題名: *省略可
    本文: *省略可
  • 名前、e-mail は一度登録すると記憶されますので次回から入力省略できます
  • タグ使用可。使用する場合、閉じ忘れにご注意ください
      ↓以下の記事スレッドに、フォームの内容が追加されます


    画像タイトル:img20100215233736.jpg -(33 KB)

    その3、該当機材の確定 名前: 事務局員 [2010/02/15,23:37:36] No.6204
    前述のごとく、「Japanese Midget Submarine DID Have Wireless Equipment」の記事他により、甲標的に搭載された無線機材は96式空2号無線電信機の特型であることがほぼ判明したが、その外部構造については空2号や回路図を基に推測する他はなかった。しかし、その後、米国のTechnical Air Intelligence Center (TAIC-米海軍航空情報部)が大戦中に作成した鹵獲日本軍用機に関わる資料の中に、甲標的搭載型と推測構造が相似する「試製短波無線電信機・96式空2号改造型」なる機材の写真及び概説記事を見つけた。
    当該無線電信機の諸元は送信出力を除き、シドニー湾で回収された甲標的搭載機材と符合し、外部構造も回路図から推察される特型と一致するものであった。本写真機材は航空機搭載型であるが、当館は現在、この「試製短波無線電信機」の据置型が、甲標的搭載用無線電信機であったと考えている。

    写真補足
    掲示がTAICに掲載されていた「試製短波無線電信機」である。無線機本体右半分が送信部、左が受信部である。送信部の構造は水晶片の装備数を除き、96式空2号無線電信機原型とほぼ同一である。下部の左右に送信用水晶片が2個実装されている。
    受信部の前面構成も96式空2号原型に類似するが、固定周波数受信用として第一局部発振用水晶片2個を装備するようになっている。下部の左右に受信用水晶片2個が実装されている。本機材は短波帯専用機のためバンド切替スイッチが必要ない。このため、受信部の操作ツマミは96式空2号の原型と比べ一つ少ない構造になっている。

    試製短波無線電信機諸元
    周波数: 7,600-10,000
    電波型式: A1(電信)、A2(変調電信)、A3(電話)
    送信機出力:電信 27w、変調電信・電話9w
    送信機構成: 水晶(2波装備可)又は自励発振UZ-510、電力増幅UZ-510 x2並列使用
    受信機構成: スーパーヘテロダイン方式(局部発振水晶制御2波装備可)、高周波増幅1段UZ-6D6、周波数混合Ut-6L7G、第一局部発振UY-76、中間周波増幅1段UZ-6D6、検波・低周波増幅1段Ut-6B7、第二局部発振(BFO)UY-76、低周波増幅2段UZ-41、側音発振UY-76
    電源: 送受信機各直流変圧器
    なお、TAICに掲載されていた構成真空管はUt- 6L7G x1、Ut-6B7 x1、UZ-41 x1、UZ-6D6 x2、UX-76 x3、UZ-510 x2(記述はx2とあるがx3の間違と推測)である。

    甲標的空中線
    当初潜水艦の短波通信は起倒式のケージ型空中線や、防潜網除去索に沿わした空中線により行われていたが、後に潜望鏡昇降装置を応用し短波檣(マスト)なる空中線が開発された。本装置は昇降装置の先端露頂部内部に1mの黄銅棒をエボナイトで防水し空中線素子とし、これを送信機に接続するもので、潜行中空中線部だけを水面上に露出し通信を行うことができた。
    この構造を応用して、甲標的にも同一型の空中線が使用されたが、本空中線に関し「海軍電気技術史」には以下の記述がある。
    「この短波檣(甲標的用)は艦制本部第3部に於いて最も苦労したものの一つで50-60浬の通信能力の要求に対し、空中線高と使用周波数の関係上殆ど自信のないものであった。」
    Navy Office Melbourneの報告書によると、本空中線は太さ約6cm、長さ約68cmのロッドで、司令塔内前部に装備され、使用時は手動ハンドルで艦橋上部に繰出す構造となっていた。
    なお、本空中線の構造については、冒頭に掲示した酒巻艇の写真により知る事が出来る。

    搭乗員の収容
    甲標的は特攻兵器と同列に考えられているが、それは必ずしも正しくない。特潜は攻撃終了後母艦に帰投し、搭乗員を収容後、乗艇は自沈処分することになっていた。伊号第16潜水艦の電信員であった故石川幸太郎氏の陣中日誌「潜水艦伊16号通信兵の日誌」(草思社)の中には、無線支援による特殊潜行艇との夜間洋上会合訓練に関わる記述が多くあり、搭乗員の収容に配慮がなされていたことが分かる。

    1942年(昭和17年)2月15日の日記には「・・・本日の無線方位測定は結果非常に良好で、誤差最大10度、また水信(水中受信「音響」)による距離6000メートにて聴取可能。及び無線、水信により、同時発射時間差による距離測定も良好なる。・・・」とある。
    「本日の無線方位測定は結果非常に良好で・・・」とは甲標的から発せられた電波を伊16潜の短波用方向探知機で受信し、方位測定を行った事を示唆すると考えられる。我が国の艦艇は通常長波用方向探知機のみを装備し、艦艇使用では誤差の多い短波用方向探知機は装備していなかった。しかし、甲標的を搭載した潜水艦には会合目的として、特別に短波用方向探知機を装備していたと考えられ、2月12日の記述には「午後8時出航。特殊潜行艇の訓練及び通信科作業としては、短波方位測定による自差曲線(測定値補正表)作成及び自隊訓練。・・」とある。

    ところで、「・・水信(水中受信)による距離6000メートにて聴取可能。」とは甲標的がゴング等により音響を発し、これを伊16潜の水中聴音機で受信し、大凡の距離を測定する作業であったと考えられる。よって、「・・無線、水信により、同時発射時間差による距離測定も良好なる。」とは甲標的が音響発信と同時に電波を発信し、伊16潜では電波の受信時間と水中聴音機による音響受信時間の差により、標的間の距離を測定する作業であろう。つまり、音響の到着時間が4秒で、方向探知器の測定結果が方位90度であったと仮定すると、水中での音速は大凡1,500m/秒であることから、発信源である甲標的は、測定艦より90度の方位線上約6,000mに位置することになる。

    最新情報
    真珠湾攻撃に参加し、鹵獲・回収された特潜については、米国側より関連写真や戦闘記録等多くの資料が公表されている。しかし、搭載無線機材に関わるものは皆無であり、唯一の資料が冒頭に掲示した酒巻艇の司令塔上部に展開された特潜用短波檣であった。
    ところが、先日、以前の来館者より情報の提供が有り、米国アリゾナ大学が所蔵する戦艦アリゾナに関連した資料の中に、特潜搭載無線機材に関わる銘板写真を見つけることができ、この写真には以下の説明文が付記されていた。
    Name plate of radio transmitter from two man Japanese midget submarine which entered Pearl Harbor and was sunk, December 7 1941. (これは、1941年12月7日に真珠湾に潜入し撃沈された日本の二人乗小型潜行艇に装備されていた、送信機の銘板である)

    上記によると、当該資料は特潜の送信機に付けられていた銘板とのことであるが、記述には「振動直流変圧器・96式空2号無線電信機受信用・海軍航空技術廠」とあり、本機材が96式空2号無線電信機の、受信部用バイブレター式電源であることが分かる。
    ところで、既に概観した様に、甲標的に搭載された無線機材は96式空2号無線電信機を改造した特型であったと考えられる。このため、電源部は96式空2号に共通しており、よって、本受信電源は従来の機材を特型に流用したものと考えられる。
    何れにせよ、この銘板により、真珠湾攻撃艇に搭載された無線装置は、シドニー湾攻撃艇と同様に、96式空2号無線電信機に関連した機材であった事が判明し、誠に幸いであった。
    なお、以下のURLで該当の銘板を閲覧することが出来る。
    http://www.library.arizona.edu/exhibits/ussarizona/ship/64-5-1.jpg



    資料提供: 秋本実殿
    資料出典: U.S. Technical Air Intelligence Center Manual No.1、Japanese Aircraft Performance & Characteristics

    [返信しないで戻る]