今般、国内のNet Auctionで「地3号無線機」の送信機遠隔操作(遠操)装置を構成する「操縦器」を入手した。本機は対向機材である「中継器」と共に遠操装置を構成し、受信所より、500〜1,000m程離れた場所に設置された送信機を、遠隔で運用した。 入手中継器の程度は非常に良好で、また、内部には継電器動作用としてB-18号乾電池(22.5V)が装置されており、驚いた。本乾電池は当館が資料として長年にわたり入手に努めていた物で、今般、期せずして収集が叶い、誠に幸であった。 「地3号無線機」は1940年(昭和15年)頃より暫時実施された陸軍の第四次制式制定作業に於いて兵器化された航空部隊用の対空通信機材であるが、その公称通信距離は100km程度と短く、本機は主に部隊内通信用の汎用機材として使用された。 なお、当館は本操縦器の入手により、「地3号無線機」構成機材の大半を所蔵することになり、誠に幸である。地3号無線機諸元用途: 対空通信通信距離:100Km周波数: 送信1,500-6,675KHz、受信1,500-6,675KHz電波型式: 電信(A1)、変調電信(A2),電話(A3)送信機: 出力40w(A1)、8w(A2・A3)、水晶又は主発振UZ-6D6、電力増幅UY-807A x2並列構成、第一格子変調UZ-6D6受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段、中間周波増幅1段、オートダイン検波、低周波増幅1段送信電源: 0.6馬力発動発電機受信電源: 蓄電池及び直流変圧器、空中線装置: 逆L型、柱高6m、水平長20m、地線は地網2枚遠操装置について 航空部隊司令部、又は中枢に於ける通信は対空、対地と多方面にわたり、同一施設内に送受信機を設置し通信を行うと、相互干渉が発生し運用が困難となる。このため、各対空、対地通信用の受信装置を受信所に集合設置し、各送信機は500〜1,000m程離れた場所(集合の必要なし)に設置し、受信担当は、遠操装置を介し、送信機を運用した。 遠操装置は受信所に設置される操縦器、送信所に設置される中継器により構成され、両器は片線接地構成の通信線で結ばれる。 遠操装置の基本回路構成は電鍵・電池・継電器、片線接地式中継線から成るループ回路で、これに対向呼び出し用のブザー回路が付加されてる。受信所で操縦器に接続した電鍵を叩くと回路に電流が流れ、送信機の横に設置された中継器の継電器が動作する。このリレー接点回路は送信機の電鍵回路にコードを介し接続され、受信担当は遠隔で送信機を運用する事が出来る。 装置設営後、受信所の通信担当は、送信機用発動発電機の起動・停止の指示をブザーで行い、また、簡単な打ち合わせも事前の取り決めに従い、ブザーにて行った。資料補足 掲示組写真@は今般入手した「地3号無線機」の送信機遠操装置を構成する「操縦器」である。本機に欠品は無く、内外の状態も良好であった。 写真Aは所蔵する「中継器」と組み合わせた「操縦器」で、上部に載っているのが92式小被覆線である。本通信線は93式軽被覆線と共に、短距離の通信回線や制御回線に使用された。 写真Bは地3号無線機の基本遠操形態構成装置で、中央左が受信機、右が送信機である。掲示の送信機は地3号無線機の原型で、受信機は中期型である。 写真Cは操縦器の内部に装置されていた64号型乾電池(4.5V)及び、B-18号乾電池(右)である。B-18号の電圧は22.5Vで、之を直列接続して必要電圧を発生させ、陸軍の電池管式受信機の全てに使用した。