今般、国内のNet Auctionで地1号受信機を構成する直流回転式電源(ダイナモ電源)を入手した。本受信機は通常外部設置の交流式電源により運用を行うが、野戦での運用を考慮し、直流式電源も併せ整備された。 入手電源の程度は良好であったが、残念ながら銘板が欠損していた。使用部品から本電源の製造は1944年(昭和19年)末と考えられ、このため銘板には「ム65受信機電源」と記されていた可能性がある。 清掃の後、電源の動作試験を行ったとろ、当初は起動しなかったが、ブラシ及び整流子を清掃し、また、ブラシのテンション調整等により動作状態に復帰した。しかし、定格入力6Vに於ける本電源の出力電圧は200Vであるが、現在の出力は180V程度である。地1号受信機補足 1939年(昭和14年)より暫時実施された陸軍の第四次制式制定作業に於いて、航空部隊の地上用無線装置として地1号無線機が制式化された。間もなくして大戦が勃発すると、通信監査や敵国の航空通信傍受用として多数の汎用受信機が必要となり、「地1号監督用受信機」が企画、開発され、「地1号受信機」として導入された。 地1号受信機(原型)は地1号無線機を構成する受信機を簡易化した構造で、運用周波数は同一の140-20,2000KHzであり、この周波数帯を差替え式線輪9本で受信した。 本受信機の基本構造や回路構成は地1号無線機/受信機と殆ど変わるところが無い。しかし、地1号無線機/受信機が非常に重厚な作りで大量生産には適していない構造であったのに対し、地1号受信機では中間周波トランス等構成部品の大幅な簡略化や各部材料の一般化が実施された。このため、受信機の重量は地1号無線機/受信機に比べ大幅に減少した。「地1号受信機」原型諸元受信機構成: スーパーヘテロダイン方式(AGC機能付)、高周波増幅2段、中間周波増幅2段、低周波増幅2段受信周波数: 140-20,000KHz中間周波数: 65KHz(受信周波数140-1,500KHz)、450KHz(1,500-20,000KHz)帯域濾波器: 450KHz水晶式濾波器電源: 交流式電源、蓄電池及び直流回転式変圧器受信空中線: 逆L型「ム」表記について 大戦後期になり、陸軍は無線機材の管理を容易にするため装置の呼称変更を企画し、航空部隊用機材について率先し実施した。本式は各無線装置に無線を表す「ム」に続く管理番号を与えるもので、付与例としては、地2号無線機はム62、地3号無線機はム63、地1号受信機はム65、飛1号無線機はム51等々である。しかし、新規の呼称は新たに生産される機材にのみ付与されたため、結果、同一機材でありなが従来の呼称機器と「ム」表記の機材が混在することになった。このため、今日では収集に際し不都合である。掲示資料補足 組写真@の左が今般入手した直流回転式変圧器で、右が地1号受信機2型である。 写真Aは直流回転式変圧器の内部で、然したる欠品は無い。左の板は電源の裏蓋である。 写真Bは地1号無線機/受信機の内部で、写真Cは地1号受信機の内部である。地1号無線機/受信機の造りは中間周波トランスを含め、地1号受信機と比べ大分異なる。また地1号無線機/受信機は各部にクロームメッキを施した銅合金板を多用しており、重量も非常に重くなっている。