先般旧軍関連ジャンクを入手したところ、この中に用途不明の咽頭マイク(カーボン型)が含まれてた。このマイクは首の後ろ側から装着する仕様で、ドイツ陸軍の野戦用、車両用無線機材で使用される咽頭マイクと全く同一の構造である。当館は之まで、この構造の国軍咽頭マイクを確認した事が無く、誠に驚愕した。 この咽頭マイクは接線の構造から陸軍機材用であることは間違いないが、残念な事にコードが途中で切断されており、接続プラグの構造による使用機材の判定が出来ない。当該ドイツ型咽頭マイクが何時製造されたのかは全く不明であるが、今日までこの型の送話器は確認した事がなく、このため、その製造は戦争末期で、生産数は極僅かであったと考えられる。 さて、肝心の用途であるが、その一つはドイツ陸軍と同様に野戦用無線機材に於ける使用である。帝国陸軍は野戦用無線機材である94式5号や6号無線機に咽頭型マイクを使用している。しかし、両機は1934年(昭和9年)の導入以来、殆ど変わることなく終戦まで使用され、後継機も研究はされるが、開発されることはなく、また、空中線以外、備品に然したる変更は行われなかった。 大戦期、陸軍はレーダー等の電波兵器の開発に無線研究要員の大半を投入し、通信機器に関わる開発計画の殆どは中止又は放棄された。しかし、この様な状況下でも、開発、導入が進められたのが車輛用無線機である。事実、車輌無線機甲、乙、丙は大戦中期より暫時導入が始まった。また、戦争末期には、これらの後継機と考えられる型式不明の車両用無線機材が数種類導入された。 このため、現在の所、当該ドイツ型咽頭マイクは、ドイツと同様に車輌無線機用で、大戦末期に導入された型式不明機材の構成装備品ではなかったかと考えている。何れにせよ、該当機材を確定出来る資料を、何としても入手したいものである。掲示写真補足 組写真@は先般入手した帝国陸軍の咽頭マイクである。コードが切断されており、接続端子の構造から該当機材を推測することが出来ない。 写真Aはドイツの携帯式VHF無線機「Kleinfunksprechr.d( Kl.Fu.Spr.d)」に装備の咽頭マイクで、接線の途中に送受信転換器が装置されている。 写真Bは国産型及びオリジナルのドイツ製咽頭マイクで、左が国産型、右がドイツ製である。両送話器の構造は全く同一である。 写真Cは94式5号無線機で、人形の首に装着しているのが咽頭型マイクである。本送話器はドイツ型とは異なり、手持ちにより、通常の送話器の形態で使用することも出来る。