先般、帝国陸軍が1944年(昭和19年)の初頭に開発した夜間戦闘機用接敵レーダーである「タキ2号」を構成した送信機二機種を入手し、その概要を当項に掲示た。これに続き、今般同一の業者より、タキ2号の変調機も入手する事になり驚愕した。之までに、帝国陸海軍に関わる夜間戦闘機用レーダーの現存機材は確認された事が無く、これらの入手は当館にとり誠に幸いであった。 タキ2号は等感度測定方式の接敵レーダーで、空中線装置、送信機、受信機、波形表示を行う指示装置及び電源装置他により構成されている。本機には原型の1型、大戦末期に配備が進められた2型及び、試作段階の3型があり、また、送信機には変調器無しと、装備の二機種が存在する。今般入手した変調機は変調器を装備しない前期型送信機に対応した機材と考えられる。 当該変調機は先に掲示した掲示板No9158「タキ2号2型概念図」の変調部に符合し、構成管は同一の五極管ソラ、五極管PH-1、ビーム管UY-807Aである。このため、本変調機は、先に入手した変調器内蔵式送信機の変調部と同一構成と考えられる。(掲示板No9162「陸軍夜間戦闘機用接敵レーダー『タキ2号・・・』」参照)タキ2号2型緒元用途: 夜間戦闘機接敵・射撃管制測定項目: 方位角・仰角・距離有効距離: 約5km周波数: 375MHz繰返周波数: 3,000Hzパルス幅: 1.5μs送信尖頭出力: 2Kw送信空中線: 3素子八木受信空中線: 3素子八木4基送信機: 発振SN-7 (P.P.) 変調方式: パルス変調、変調管UY-807A受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅無し、周波数混合(UN-955)、局部発振(UN-955)、中間周波増幅5段(MB-850A x5)、検波(MB-850A)、低周波増幅2段(MB-8502 x2)中間周波段帯域幅: 1.2MHz受信利得: 100db信号表示: Aスコープ方式(探索・測距用1基、照準用2基、各75mm SSF-75-G)測定方法: 等感度方式距離精度: 0.1Km方位角精度: 1-2゜電源: 直流回転式交流発電機、入力DC24V、出力3相100V(400Hz)重量: 120kg製造: 住友、約200台(1型・2型)掲示資料補足 組写真@は今般入手した接敵レーダー「タキ2号」を構成する変調機で、構成真空管は左よりUY-807A、PH-1、ソラ、整流管KX-5Z3である。 写真Aは先般入手した変調器内蔵無しのタキ2号送信機と併せた変調機である。本送信機の発振回路は三極管TA-1506二本によるP.P.構成である。 写真Bはフイリッピンで米軍に鹵獲されたタキ2号を構成する送信機である。本機は変調回路を内蔵しておらず、発振回路は三極管SN-7のP.P.構成である。時系列から、本機はTA-1506で構成される送信機の改修型と考えられる。 写真Cはフイリッピンで鹵獲されたタキ2号2型の構成装置で、左端が電源部、右が変調機内蔵型送信機、その右下段が受信機、右端下段が波形指示装置である。 なお、写真BCの出典はUSNAである。