先般JA1AI、稲葉OMより当館に御寄贈頂いた米国陸軍通信隊用受信機、BC-779を動作させるべく、先月より確認作業を始めました。本受信機は第二次大戦の勃発に際し、米国陸軍がハマーランド社の民生用受信機を調達し制式化した汎用受信機で、陸軍の各部署で広義に使用されました。 BC-779は朝鮮戦争の頃まで使用されましたが、その後放出され、日本に於いても1960年代を中心として、三協特殊無線やトヨムラ他多くのジャンク店等で販売されました。BC-779は通常の軍用受信機とは異なり、スプレッドダイアルが付属しているためアマチュア無線用としては使い勝手がよく、また、高周波増幅2 段、中間周波増幅3段構成のこともあり、当時にあっては誠に高感度な受信機でした。 このため、金銭的に余裕のあった一部のアマチュア無線家が挙って購入しましたが、1955年当時、本体だけで40,000円近くもした本機は一般の無線家にとっては誠に高嶺の花でした。このため、その後時代が変わっても、多くのアマチュア無線家のBC-779に対する強い思いは変わらず、今日に至っても、未だに最も人気の有る軍用受信機の一台と成っています。 さて、確認作業を始めたBC-779ですが、本受信機は稲葉OMにより完全な修復が成されており、このため、各部を調査するも然したる問題点は無く、特段の手当をする事なく動作を開始しました。しかし、時々感度が若干低下することがあり、このため、現在は問題の箇所を確定するため、運転を継続し、様子見をしている最中です。 未だ確認作業の途中ですが、本受信機の感度は今日でもすこぶる良く、また、周波数の安定度も驚く程に良好です。受信は7MHz帯のアマチュアバンドを中心に行っていますが、SSBの復調は誠に容易で、動作を開始して30分もすれば、BFO回路を含め、周波数の安定度は申し分有りません。また、BC-779には帯域幅可変用の位相可変式水晶濾波器を装置していますが、驚いた事に回路は生きており、その動作を容易に体感することが出来ました。通常この手の水晶濾波器は経年変化により、その殆どが減衰器状態となっていますが、本機はまともに動作し、誠に驚きました。 ところで、時節柄外出を控えているため、ここ数日、本受信機をよく弄っています。スピーカーは米軍のLS-454を使用していますが、事務局員にはべークコーン独特の、あの鼻を摘んだ様な音がたまりません。BC-779のオレンジに浮かび上がるダイアル盤を眺めつつ、べークコーンを介しSSBの復調音を聞く、誠に至福の一時です。BC-779諸元受信周波数: 100-20,000kHz(5バンド)構成: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅2段(6K7 x2)、 第1検波(6L7)、局部発振(6J7)、中間周波増幅3段(6K7・6SK7 x2)、BFO(6SJ7)、第2検波(6H6)、ANL(6N7)、AVC(6SK7・6H6)、低周波増幅1段(6J5)、低周波増幅2段(6F6)、低周波増幅3段(6F6 x2 P.P.構成)中間周波数: 465KHz、水晶濾波器付電源(外部設置式): 交流入力105〜125V、高圧整流5U4G、バイアス整流5Y3お知らせ 当館は最近掲示活動の基軸をFacebook(FB)に移しています。このため、FBメンバーの方は以下のURLにお越し下さい。https://www.facebook.com/doi.takashi.71?ref=bookmarkshttps://www.facebook.com/groups/1687374128228449/