先日知人の蒐集家よりマツダの極超短波送信管SN-7及びT-305各一本を頂いた。両管は共にガラス管の一部が壊れた未充足品ではあるが、SN-7は先年入手した帝国陸軍の夜間戦闘機用接敵レーダー「タキ2号」を構成した送信機の発振管であり、当館にとっては値千金である。 SN-7、T-305は類似構造で、共にRCAの送信用三極菅8012を基に開発されたと考えられるが、何が先に導入されたのかは不明である。この内、T-305には「ホ467」及び「24・5」のマーキングがあり、製造は昭和24年(1949年)5月と推察される。入手送信機とSN-7 先年入手したタキ2号の送信機は原型である1型と、後期型である2型の2機種が確認されている。入手した1型送信機の発振回路は住友の双三極管TA-1506二本により構成され、パルス変調機は独立した別筐体構成である。一方、2型は変調回路を内蔵し、発振管はマツダの三極管SN-7二本により構成されている。 幸いな事に、1型送信機にはTA-1506が実装されていた。しかし、2型は全管が欠損しており、変調回路を構成するソラ、PH-1、UY-807Aについては所蔵管を装備したが、肝心の発振管SN-7二本については収蔵が無く、充足が叶わなかった。 この為、当館にとり、今般のSN-7一本の入手は誠に幸いで、早速2型送信機に実装した。願わくば残る一本も早期に入手し、何とか原状を回復させたいものである。SN-7諸元用途: 極超短波発振構造: 三極管心線電圧: 7.5V(3.5A)陽極電圧: 1000V(50mA)陽極損失(参考資料): 20W(8012)最高周波数(参考資料):500MHz(8012)タキ2号補足 本機は等感度測定式の接敵レーダーで、空中線装置、送信機及び受信機、波形表示を行う指示装置及び電源装置により構成されている(掲示資料C参照)。本機には原型の1型、大戦末期に配備が進められた2型、及び試作段階の3型がある。 タキ2号1型の送信機には先年当館が入手した原型とその改良型があり、改良型送信機では発振管がTA-1506よりSN-7に変更された。このタキ2号1型の改良型送信機はフイリッピンで米軍に鹵獲され、写真資料として残っている。タキ2号2型緒元用途: 夜間戦闘機接敵・射撃管制測定項目: 方位角・仰角・距離有効距離: 約5km周波数: 375MHz繰返周波数: 3,000Hzパルス幅: 1.5μs送信尖頭出力: 2Kw送信空中線: 3素子八木受信空中線: 3素子八木4基送信機: 発振SN-7 (P.P.) 変調方式: パルス変調、変調管UY-807A受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅無し、周波数混合(UN-955)、局部発振(UN-955)、中間周波増幅5段(MB-850A x5)、検波(MB-850A)、低周波増幅2段(MB-8502 x2)中間周波段帯域幅: 1.2MHz受信利得: 100db信号表示: Aスコープ方式(探索・測距用1基、照準用2基、各75mm SSF-75-G)測定方法: 等感度方式距離精度: 0.1Km方位角精度: 1-2゜電源: 直流回転式交流発電機、入力DC24V、出力3相100V(400Hz)重量: 120kg製造: 住友、約200台(1型・2型)掲示資料補足 組写真@は今般知人より入手したSN-7(左) 及びT-305(右)で、共に製造はマツダである。 写真Aはタキ2号2型送信機に実装した入手SN-7で、他の一本が引き続き欠品となっている。 資料BはJapanese War Time Military Electronics And Communications Section VI Japanese Army Radarに掲載されている「タキ2号・2型」レーダーの構成装置である。 資料Cは「タキ2号・2型」の装置概念図である。