先般掲示したドイツ陸軍送信機「5W.S.」に関わる「交換希望」であるが、幸いにもドイ人収集家の格別の配慮により実現し、先週無事到着した。 5W.S.は1930年代の中頃に導入された野戦用送信機で、構成は三極管2RS241二本による主発振・電力増幅方式であり、電波形式は電信(A1)、電話(A3)である。 早速各部の点検を行ったが、幸いにも本機に然したる欠品は無く、原状を保っていた。このため、簡易な動作確認試験を行ってみた。 A電源の4V、B電源の250V(定格300V)は安定化電源より供給した。疑似空中線には5W/100Vのランプと50Ωのダミーを使用し、試験は2,000kHzで行った。 モードをA3に設定し、電源を入れると、装置は呆気ないほど簡単に発振し、接続しておいた5Wのダミーランプがぼんやりと点灯し、また、各計器も動作した。 線條電源に定格4Vを加圧し、電流は1.1Aである。2RS241一本に大凡500mA程度流れている事になる。陽極電圧は定格300Vであるが、250Vを加圧し、約110mA流れた。各本55mA相当である。 ダミーランプの光り具合から出力は1W程度であろうか、その後50Ωのダミーに変更したところ大凡1.5Wの出力が確認出来た。単純計算では、電力増幅管の入力は10W程度となるが、それにしては出力が少ない。 一方、流石にドイツの野戦用機材で、周波数の安定度は抜群である。しかし、A1モードで電鍵を叩くと、安定化電源を使用しているが、復調信号音は若干流れる。主発振・電力増幅構成のため、当然の結果であろう。 簡単な動作確認試験ではあったが、大凡の状況は把握出来た。入力の割に出力が少ないが、これは発振部・電力増幅部のトラッキングエラー、疑似負荷のインピーダンス等に関係していると推察された。 A3モードでの動作も確認したかったが、残念ながら使用出来るカーボンマイクが無いため、今回は諦めた。5W.S.諸元用途: 野戦用通信距離:60km(電信)、18km(電話)送信周波数: 送信950-3,150kHz(4バンド)電波形式: 電信(A1),電話(A3)送信出力: 5W送信構成:発振2RS241、電力増幅2RS241、格子直接変調電源装置: 12V回転式直流変圧器、ペダル式発電機空中線: 単線展開式