今般、帝国陸軍が1934年(昭和9年)に制式化した、94式6号無線機を構成する電源電池収納鞄を入手した。 94式6号無線機は、対向通信用の二セットが一つの可搬用木箱に収容されており、電池鞄については従来一個が欠品であった。しかし、今回の入手により主要構成物品のほとんどが揃うこととなり、誠に幸いである。 これにより、木箱に収容される未収集の構成備品は、空中線装置を収納する布袋二枚のみとなった。 入手した電池鞄は未使用品であり、内部には電源用電池の収容筐も残っていた。また、未使用の送受話器が一組付属していたが、こちらは経年によりゴム引きの接線が劣化し、触れることができない状態である。 しかし、送受話器は紙テープで梱包されており、出荷時の状況を知る上で貴重な資料となるため、このままの状態で保存するつもりである。 陸軍「94式6号無線機」概要 94式6号無線機は、陸軍の第三次制式制定作業により兵器化された、各部隊・各兵科用の携帯式簡易無線電話機である。本機は軽便で、兵一〜二名による運用が可能であったことから、短期間のうちに陸軍各部門に広く浸透し、また一部は海軍陸戦隊にも供与された。 1934年当時、歩兵が移動しながら使用できる携帯式無線装置を導入していた国は、先進各国の中でもごく僅かであり、本機は極めて先駆的な通信機であった。 94式6号無線機は、双三極管30MCを一本使用した簡易無線機であるが、制式化以降、後継機が開発されることはなく、陸軍唯一の携帯式無線電話機として改修を重ねつつ太平洋戦争終結まで使用された。 このため、主装置である23号型通信機には、原型からF型までの初期一バンド型、普及型である三バンド方式の23号H型、および23号型など、各種の型式が存在する。 94式6号無線機(普及型・23号型通信機)緒元用 途:歩兵用通信距離:約2km周波数:25〜45.5MHz(3バンド)電波形式:変調電信(A2)、電話(A3)装置構成:自励発振・超再生検波方式構成管:UZ-30MC送信構成:発振 UZ-30MC(1/2)、変調 UZ-30MC(1/2)、出力 0.5W(A2・A3)受信構成:超再生検波 UZ-30MC(1/2)、低周波増幅/低周波発振 UZ-30MC(1/2)電源装置:乾電池(平角4号×2個、B-18号×6個)、手回式発電機空中線:L型、垂直部1.4m、対地線(カウンターポイズ)水平0.65m運 搬:駄馬1頭に4機駄載、1通信機材は兵1名にて携行可開設・撤収:兵1名にて1〜2分整備数:6,665機(戦時中)