横浜旧軍無線通信資料館掲示板


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    画像タイトル:img20251227091632.jpg -(267 KB)

    地3号無線機・送信機用発動発電機の修復 名前: 事務局員 [2025/12/27,09:16:32] No.9594
     先般掲示の如く、自動車・内燃機関修復家の内和雅仁氏により進められていた陸軍航空部隊の地3号無線機を構成した送信機用発動発電機の修復が完了した。この発動発電機は米国からの買い戻し品で、前所有者により内部が弄られていたが、内和氏の努力により動作状態に復帰した。氏のご協力に、心より感謝申し上げる。
     なお、参考資料として、本発電装置と修復作業の概要について掲示した。

    発動発電機概要
     本装置は発動発電機及び小型の配電盤により構成されている。発動発電機は単気筒0.6馬力の2サイクル空冷式ガソリン機関及び高圧・低圧直流発電機により構成され、起動はスタートロープによる手動式である。発動機の回転数は3,500rpmで、高圧出力は600V(0.22A)、低圧出力は8V(4A)である。

     配電盤は発動発電機より供給される電力を受電し、送信機に配電を行う。配電盤は過負荷継電器、自動電圧調整器、監視計器等により構成され、発生電圧の制御、監視及び過電流を防止し、発電機の保護を行う。 
     本発電装置は送信機を介し、受信機の一次電源である6Vを供給し、併せ、受信機の蓄電池を充電する事が出来る。発動発電機の最大容積は33×42×23cmで、重量は約20kgである。

    地3号無線機発動発電機諸元
    発動機: 2サイクル方式
    出力: 0.6馬力
    回転数: 3,500rpm
    燃料: 混合ガソリン
    発電機出力(直流): 高圧600V、低圧8V
    最大容積: 33×42×23cm
    重量: 20kg
    製造元: 三國商工株式会社

    修復作業概観
     内和氏より提供頂いた発動発電機修復の要旨は以下である。

    ・現状の確認
     圧縮有り、点火はわずかにスパークあり、プラグコードは使用不可の状態である。ピストンの固着は無いが、ベアリングのゴロゴロ音が感じられた。

    ・分解
     汎用プーラーを加工して、フライホイールを取り外す。内部には高圧発生用コイル、ポイントが一体の円形プレートに固定されており、点火時期の微調整が可能な構造である。各部を取り外し、各接点の研磨、絶縁状態のチェックを行い、おおむね良好であることを確認した。最初の状態に組み付け、プラグコードを代用品と交換した。起動ロープでフライホイールを回転させると、始動が可能な火花を確認できたので、本格的分解作業に入る。

     燃料タンクフレームを外し、エンジンもベースから取り外す。燃料タンクに腐食は無いが汚れがあったのでキャブクリーナーを内部に塗布し、ブラシ等で清掃した。燃料コックも分解したが、パッキン等は無く、テーパー面をスプリングで押し付けただけの構造である。取り敢えず、パッキンを追加した。タンクキャップは裏表の両用で、運搬時の密閉と、運転時のエア抜き穴側を使い分ける構造である。

     キャブレターは過去に分解された際、フロートを逆に組んだため亀裂が入っていた。このため、ハンダで穴埋めをし、ニードル部も荒れていたので紙やすりで仕上げた。キャブレターは吸い口の金網をずらすと小径の穴になり、冷間始動用のチョークになる。キャブレターピストンバルブにはクロームメッキが施されており、摩耗もなく良好であった。

     キャブジェットはメインとスローで調整スクリュー等は無く、セッティングの変更は出来ない。分解清掃を行い、フランジガスケットをスリーボンド製シートで製作して取り付けた。後日、試運転時にキャブのオーバーフローが発生したので、ニードル先端をボール盤で回転させながら修正後、相手側とコンパウンドですり合わせを行った。

    ・エンジンアウトプット側分解
     ファンカバーの金網を取り外し、空冷ファンと一体のアウトプットを取り外す。裏面は放射状の溝構造で、そこに鉄球が3個組み込まれ、遠心ガバナー機構を構成している。シリンダーヘッド、シリンダー、ピストンの取り外しを行い点検するが、各部の状態は概ね良好であった。しかし、クランクには若干錆が見受けられた。また、ヘッドの固定ネジが1本折れていた。

     クランクケースは前後に分離でき、ガスケットの厚みでクリアランスが変わる構造である。ヘッドガスケットは厚いアルミのリングを、シリンダーの上部にはめる構造である。現品は磨いて再使用した。

     クランクベアリングはNTN製で、錆による虫食いが発生していた。幸い現代と同様の規格のため、NSK製の金属プレス保持器式の物に変更した。分割クランクのためベアリング交換後はダイヤルゲージで測定して、銅ハンマーの加打によりゲージの振れで5/1000まで調整した。

    ・組み立て
     ケースをヒーターで温め、ベアリング圧入時の負荷を減らして組み付けを行った。シリンダーのスタッドボルトは1本のみ新規製作のものに変更した。メインケースの組付けが完了後、点火ユニットの取付、不良であったプラグコードを新たに作成した。スパークプラグは付属していた米国チャンピオン製のものを、再使用した。

     フライホイール組付け時、フライホイールの勘合部とクランクにキーが噛み込み、内側から盛り上がっているのを発見した。過去に、半月キーがずれたまま組み込みを行った結果である。この部分は点火のポイント開閉のカムを兼ねている重要な場所である。このため、フライホイールを旋盤にかけ凸部分を切削し、サンドペーパーで研磨仕上げをして修復した。

    ・始動テスト
     当初、始動はうまくいくが、2度目の起動が困難であった。クランクケースのドレンを開け、プラグを外し、何度かクランキングをして残留ガスを十分に飛ばすと、再起動が可能となる。原因はフロートのニードルの当たりが悪く、オーバーフロー気味となるためで、何度かニードル修正を行い状況は改善した。

     本症状の根本原因は、ねじ式のミクスチャーが無く微調整ができないこと、過去に何度も掃除され真鍮のジェット類の穴が大きくなっていること。また、フロートのニードルが痛み、何度も研磨して短くなり、その分フロート室油面が高くなりガスが濃くなる、等である。

     なお、本発動発電機の修復に際し、発電機部は低圧、高圧用ブラシの清掃に留めた。現在エンジンの回転数を若干低めに設定しており、出力電圧は、負荷時の低圧が約7.6V、無負荷の高圧は約610Vである。

    地3号無線機補足
     本無線装置は陸軍航空部隊の近距離用対空、対地通信機材であるが、実際は軽便な汎用機材として各部門で広義に使用された。本機は中型航空機による輸送を考慮して設計され、構成装置各部は小型軽量で、必要に応じ人力による運搬も可能であった。

     地3号無線機の公称通信距離は電信が100kmで、運用形態は第四次制式機材に共通して、電信は電鍵の操作によるブレークイン方式で、電話は電鍵の操作による変則のプレストーク方式である。

    地3号無線機諸元
    用途: 対空・対地通信
    通信距離:100km
    送信周波数: 1,500〜6,675kHz
    電波型式: 電信(A1)、変調電信(A2)、電話(A3)
    送信機構成: A1出力40W、A2・A3出力8W、水晶又は主発振UZ-6D6、電力増幅UY-807A x2並列構成、第1格子変調UZ-6D6
    送信機電源: 0.6馬力発動発電機、交流式電源
    送信空中線装置: 逆L型、柱高6m、水平長20m、地線は地網2枚
    受信周波数: 1,500〜8,900kHz
    受信機構成: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段(UZ-78)、周波数変換(Ut-6A7)、中間周波増幅1段(UZ-78)、オートダイン・再生式検波(UZ-78)、低周波増幅1段(UZ-78)
    中間周波数: 450kHz
    受信機電源: 直流回転式変圧器及び6V蓄電池
    受信空中線装置: 直操時は送信空中線と共用、遠操時用は不明




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