今般、浜松陸軍飛行学校が1939年(昭和14年)に作成した標記の資料を入手した。九四式飛二号無線機は1936年(昭和11年)に実施された第三次制式制定作業において兵器化された大型・中型航空機用無線機材であり、本取扱法はその運用教育の補助資料として使用されたものと考えられる。 帝国陸海軍の航空部隊に共通して、機上無線機に関わる取扱説明書は非常に少なく、今般の入手は誠に幸いであった。当館は九四式飛二号無線機の構成機材を各種所蔵するが、送信機は未所蔵である。願わくば、この流れで送信機も是非入手したいものである。九四式飛二号無線機について 第三次制式制定作業において、本機(研究名15号無線電信機)は当初、対地通信距離600km(電信)の中型航空機用として研究され、重爆撃機等の大型機用については、同時期に開発が進められた通信距離1,000kmの14号無線電信機(予定九四式飛一号無線機)が予定されていた。 しかし、14号無線電信機は重量および容積が過大となり、制式化が困難な状況となった。このため、15号無線電信機が中型・大型航空機に搭載される運びとなり、通信距離1,000kmの問題は運用周波数の選定により解決することとなった。 本経緯により、九四式飛二号無線機は第三次制式制定作業における唯一の中・長距離通信用機材として、単座戦闘機を除く全ての航空機に搭載された。九四式飛二号無線機参考資料「翼の凱歌」 本作品は1942年(昭和17年)に公開された東宝製作の戦争映画である。ストーリーは、操縦士であった父を墜落事故で失った兄弟が、それぞれ陸軍のエース・パイロット、テスト・パイロットへと成長する物語である。 この映画の撮影には陸軍航空本部が全面的に協力し、登場する一式戦闘機の飛行には実機が使用された。また、一式戦闘機のテスト飛行場面では、対空通信を行う九四式飛二号無線機が、実際の通信操作を再現した状況で頻繁に登場する。[https://www.youtube.com/watch?v=M1OjPJ8mCLY](https://www.youtube.com/watch?v=M1OjPJ8mCLY)九四式飛二号無線機諸元用途:中・大型航空機通信距離:600〜1,000km(電信)運用周波数:送信1,500〜7,500kHz、受信1,500〜7,500kHz電波形式:電信(A1)、電話(A3)送信機:A1出力20W、A3出力10W、水晶または主発振UX-865、電力増幅UX-865×2並列使用変調機:音声増幅UZ-89、陽極変調UZ-79(三極部P.P.)受信機:スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段(UZ-77)、周波数変換(UT-6A7)、中間周波1段(UZ-78)、再生検波(UY-37)、低周波増幅1段(UZ-41)電源装置(送受兼用):入力24V、直流回転式変圧器、当初は風車発電式空中線装置:垂下式、固定逆L型(要空中線延長コイル)、地線―機体接地