今般、ネットオークションにて標記の送信機を入手した。地3号無線機は第四次制式制定作業において兵器化された陸軍航空部隊の近距離用対空・対地通信機材であり、本機には原型・中期型および後期型の3機種が確認されている。 当館は本無線装置を構成する原型および中期型送信機は所蔵しているが、大戦末期に導入された後期型送信機は未入手であった。本型の送信機については長年入手を画策していたが、今日までその機会がなく、また実物を検分したこともなかった。このため、本機材の収集を完了させるべく、今般は無理をしてこれを落札した。 さて、入手した送信機は同調コイルが欠品していたが、他に大きな不具合はなく、程度としては良好の部類であった。しかし、末期型機材であるため、簡素化が顕著で、また配線も粗く、予想はしていたものの、若干驚かされた。とはいえ、これにて地3号無線機に関わる送信機の収集は完了し、誠に幸いであった。 なお、地3号無線機各型の送信機は、構造に若干の差異があるものの、回路構成に大きな違いはない。しかし、後期型では、各部が大幅に簡略化されている。地3号無線機補足 本機は陸軍航空部隊の近距離用対空・対地通信機材であるが、実際には軽便な汎用機材として各部門で広く使用された。本機は中型航空機による輸送を考慮して設計されており、構成装置各部は小型軽量で、必要に応じて人力による運搬も可能であった。送信機回路構成 本機は発振、電力増幅方式で、変調は電力増幅管の第1格子変調ある。運用周波数は1,500〜6,675kHzで、この周波数帯を差替式コイル3本で対応するが、発振段及び電力増幅段を構成する同調コイルは、同一ケースに収容されている。 発振は五極管UZ-6D6によるピアスGP水晶発振回路であるが、水晶片を取外すと単一コイルによる陽極同調型発振回路として動作する。また、装備する水晶片は航空部隊用の「飛号型発振具」である。 電力増幅段はビーム管UY-807A二本の並列使用によるC級増幅回路で、制御バイアス電圧は高圧電流帰還回路で発生させる半固定式である。タンク回路は蓄電器により陽極高圧回路より切り離された並列給電構成であり、同調確認用のネオン管が装備されている。 電力増幅管の陽極電圧は600Vで、送信出力はA1が40W、A2・A3は8Wである。タンク回路の出力側コイルの片側は接地され、空中線同調回路を併せ構成する。 発振、増幅、空中線各段の同調回路は独立した可変式蓄電器により構成され、同調機構はバーニアダイアル方式であるが、後期型では簡略化され、ツバ付ノブによる直接回転式に変更された。 空中線同調回路は片線接地式タンク出力コイル、インダクタンス切替式空中線延長コイル、同調用可変蓄電器及び高周波電流計より成り、接地型空中線同調回路を構成する。本回路は電流饋電方式により、全運用周波数帯を基本1/4波長で固定空中線に同調させる。 地3号無線機の運用形態は、第四次制式機材に共通して、電信は電鍵操作によるブレークイン方式、電話は電鍵操作による変則的なプレストーク方式である。地3号無線機諸元用途: 対空・対地通信通信距離:100km送信周波数: 1,500〜6,675kHz電波型式: 電信(A1)、変調電信(A2)、電話(A3)送信機構成: A1出力40W、A2・A3出力8W、水晶又は主発振UZ-6D6、電力増幅UY-807A x2並列構成、第1格子変調UZ-6D6送信機電源: 0.6馬力発動発電機、交流式電源送信空中線装置: 逆L型、柱高6m、水平長20m、地線は地網2枚受信周波数: 1,500〜8,900kHz受信機構成: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段(UZ-78)、周波数変換(Ut-6A7)、中間周波増幅1段(UZ-78)、オートダイン・再生式検波(UZ-78)、低周波増幅1段(UZ-78)中間周波数: 450kHz受信機電源: 直流回転式変圧器及び6V蓄電池受信空中線装置: 直操時は送信空中線と共用、遠操時用は不明