先般、横浜市泉区の泉川遊水地で開催されたジャンク市にて、マツダが1930年代の初頭に開発したと考えられる五極送信管「UV-1083」を通称「香水商店」より購入した。店主は、著名な収集家である香水清久氏である。 この時代、送信管は四極管が主流であったが、本管には陽極より放射される二次電子に起因する負性抵抗特性が存在した。この現象は「ダイナトロン特性」とも呼ばれ、寄生振動の原因となっていた。 このため、1930年代の初頭より、二次電子を抑圧する第三電極を備えた五極送信管の開発が進められ、今般入手したマツダ製UV-1083は、その先駆けとなった中型電力増幅管である。 本管は、1934年(昭和9年)より逐次実施された陸軍の第三次制式制定作業において、軍通信隊用の中距離通信機材「94式2号甲無線機」を構成する送信機の電力増幅管として使用された。また、開発が中止された機材での使用例には、第四次制式制定に向け研究が進められた「超重無線機」がある。 しかし、「94式2号甲無線機」は制式化後、間もなくして不整備となり、今日まで現存機が確認された例はない。「不整備」とは、追加生産および配備が行われなかったことを示唆する。その意味でも、今般、本機材を構成した送信管UV-1083を入手できたことは、誠に幸いであった。 ところで、驚いたことに、このUV-1083を使用した自作A級アンプの映像がYouTubeにアップされていた。もっとも、音質はあまり芳しくないようである。https://www.youtube.com/watch?v=io4sWAqlWKAUV-1083諸元線條電圧: 10V線條電流: 6A陽極電圧: 2,000V第2格子電圧: 500V第3格子電圧: 0V第1格子電圧: +40V陽極電流: 132mA相互コンダクタンス: 1,100µ℧許容陽極損失: 200W最大入力: 300W冷却方式: 大気自然冷却式「94式2号甲無線機」補足 本機は、1934年(昭和9年)より暫時実施された第三次制式制定作業において制式化された軍通信隊用の中距離通信機材であり、定格通信距離は200kmである。無線装置は、54号A型送信機、発動発電機式電源、配電盤、27号型受信機2台、送信機の遠隔操作装置および空中線装置等により構成され、運搬は基本的に自動貨車1輌で行った。 送信機の運用周波数は950〜7,500kHz、電波形式は電信専用であり、送信出力は100〜150Wである。受信機には、陸軍通信部隊の上級機材を構成した27号型受信機2台を装備した。94式2号甲無線機諸元用途:軍通信隊電波型式:電信(A1)通信距離:200km運用周波数:送信950〜7,500kHz、受信140〜15,000kHz送信機:出力100〜150W、水晶または主発振UY-510A、電力増幅UV-1083送信機電源:2.4馬力単気筒ガソリン発動発電機受信機:27号型2台、スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段、中間周波増幅1段、低周波増幅2段受信機電源:乾電池空中線装置:逆L型、柱高10m、水平長20m以下、地線20m裸線4条、単独受信空中線装置不明遠隔運用装置:5号A型操縦機、5号A型中継器運搬:基本自動貨車1輌開設撤収:兵6名にて20〜30分総重量: 700kg