昨今は異常気象とのことで、各地で高温や豪雨による被害が頻発し、誠に心苦しい。 ところで、8月28日は「気象予報士の日」とのことで、先般、これに関連して、日本ニュースが1946年(昭和21年)に製作した気象庁の高層観測の映像を、NHKが流していた。 ちなみに、「気象予報士の日」は、1994年(平成6年)のこの日、第1回の気象予報士国家試験が行われたことに由来するそうである。 さて、この映像に、帝国陸軍が使用していた高層観測用受信機「無線測定機・RS101型」が映し出され、誠にたまげた。当館は本受信機を所蔵しており、小生は本機を陸軍専用の受信機と考えていたが、実は汎用受信機であり、当時、気象庁でも使用されていたようである。 この受信機は、高周波増幅2段(初段は非同調)、オートダイン検波、低周波増幅2段構成で、運用周波数は0.035〜15MHz程、6組の差し替え式コイルにより、この周波数帯域を受信する。 本機は一般的な電池管構成のストレート式受信機で、特段珍しいものではないが、フリクション回転式の同調ダイヤルに、ラジオゾンデの周波数変化を読み取るバーニヤ機構が付加されている。高層気象観測 「高層気象観測」とは、ラジオゾンデによる地上から高度約30kmまでの大気観測のことで、現在は世界各地で毎日2回、世界時の00時と12時(日本標準時では09時と21時)に行われている。我が国では、掲示図のように、16か所の観測点と南極の昭和基地で、同時刻にラジオゾンデによる観測を行っている。 この観測により、観測地域の大気の構造を3次元的に知ることができ、得られたデータは、天気予報の数値モデルの初期値や高層天気図の作成に用いられる。ラジオゾンデの観測 ゾンデは、気圧・温度・湿度などの観測データを、発振周波数の変化に置き換えて送信する。このため、受信側では、高度に対応する周波数の変化を読み取ることにより、観測値を知ることができる。 高度を知らせるため、ゾンデの各発振器は高度断続器によって送信が制御される。断続器はアネロイド気圧計で、気球が1〜1.5km上昇すると発振器の電源を一時的に休止させる。これにより、観測者は気球の高度(観測高度)を知ることができる。帝国陸海軍の高層観測 帝国陸軍は気象観測に熱心で、1932年(昭和7年)から高層気象観測用ゾンデの研究を開始し、1933年(昭和8年)には、観測の基本である気圧・気温・湿度を測定する各ゾンデを開発した。 これらのゾンデは、各測定項目のデータを発振周波数の変化に置き換えて送信するが、掲示した海軍の3要素ゾンデの発振周波数は、気圧(高度)が14〜17MHz、湿度が20〜23MHz、温度が24〜31MHzである。ゾンデ発信装置 当時のゾンデは、その観測目的に応じてセンサー部は異なるが、信号送信部は共通した構造で、通常、直熱式三極管によるハートレー発振回路で構成されていた。電源は超小型の蓄電池で、高圧発生にはブザー方式を用い、交流高圧出力をそのまま発振管の陽極に加えた。 この発振回路は1測定項目専用で、気圧・温度・湿度の3要素を観測するゾンデでは、独立した3組の発振回路を装備するが、ブザー電源部は共通であった。発振周波数 ラジオゾンデの発振周波数帯は陸海軍によって異なり、また、大戦期にはVHF帯も使用されていた。 海軍の普及型である九七式高層気象観測用ゾンデの場合、気圧測定には14〜18MHz、湿度測定には20〜23MHz、また、温度測定には24〜30MHzが使用された。一方、陸軍のラジオゾンデは海軍とは異なり、主に8〜12MHzを使用した。センサーの構造・気圧測定 本測定部は、薄いアルミ製密封式中空円盤に小型の可変蓄電器を取り付けた構造で、高度に従って気圧が低くなると円盤が膨張し、可変蓄電器を回転させて発振周波数を変化させる。 ・湿度測定 本センサーは、人間の頭髪を複数本まとめて弦状に張り、中央部に可変式蓄電器を取り付けた構造である。湿度による頭髪の伸び縮みにより蓄電器が回転し、発振周波数を変化させる。使用する髪はフランス人女性の金髪が最良とされているが、事の真偽は不明である。 ・温度測定 本検知器は、細いタリュウム入り水銀温度計に金属の筒を被せて蓄電器を構成したもので、温度の変化により水銀柱が動くと静電容量が変化し、発振周波数が変化する。 ・雲測定 この種のゾンデは、陸軍では甲・乙・丙の3器種に大別される。甲型は昼間測定用で、バイメタル輻射計を用い、太陽輻射と大気散乱輻射の合計を測定する方式である。 乙型は、甲型の感度不足を補うために開発された昼間測定器で、光電管を装備し、光量によって測雲を行う方式である。本器は周波数変調方式で、搬送波(約19MHz)を光量により50〜300Hzで変調し、受信機には復調した低周波音を周波数に置き換える周波数計が装備されていた。 丙型は、光電管と豆ランプを組み合わせ、その間の光の減衰を検知して測定を行う夜間測定用ゾンデである。測定信号の発信は乙型と同一で、周波数変調方式が採用されていた。