この度、オーストラリアの収集家であるKen Hargreaves氏より、シドニーのKurrajong Radio Museumが最近入手した、陸軍「96式3号己無線機」に関する写真の提供を受けた。氏によると、本機はパプアニューギニアから入手したとのことである。 96式3号己無線機は、1934年(昭和9年)頃に導入された陸軍の小型高速艇用の無線装置である。これらの高速艇は、沿岸や河川などにおける哨戒、監視、偵察活動に使用された。 96式3号己無線機は特殊な用途のため生産数が少なく、現存する機体も極めて少ないと考えられる。当館が所蔵する関連機材は、内部が原状を留めていない送信機のみであり、これまで完全な構成で現存する本無線機を確認したことはなかった。 このため、入手は叶わないが、今回、現存する96式3号己無線機の写真を入手できたことは、誠に幸いであった。96式3号己無線機の構成 本無線装置は、送信機、受信機、電源装置および空中線装置などから構成されている。送信機は21.8 × 29 × 22.4 cm、重量8.2 kg、受信機は21.8 × 29 × 22.2 cm、重量11.1 kg、電源装置は43.6 × 17.2 × 22.4 cm、重量12.9 kgである。 送信機、受信機および電源装置は、46.8 × 50.1 × 32.1 cmの木箱に収容され、総重量は48 kgである。木箱内部には、スポンジ状の緩衝材で保護された各機器の収納架が設けられ、その背面には各機器を接続する回路が組み込まれている。 この構造により、96式3号己無線機は、各機器を木箱に収容した状態で運用した。96式3号己無線機 諸元用途: 高速偵察艇周波数: 1,500〜5,700kHz電波形式: 電信(A1)、電話(A3)通信距離: (A1)100km、(A3)20km送信機: A1出力20W、水晶又は主発振・直接輻射方式UZ-47H二本(並列使用)、変調UZ-41(第三格子変調)送信電源: 直流回転式変圧器受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段、中間周波増幅2段、低周波増幅1段、BFO(UZ-78、Ut-6A7、UZ-78、UZ-75、Ut-6B7、UY-37)、水晶濾波器、AVC機能付中間周波数: 593kHz受信電源: 直流回転式変圧器空中線装置: 逆L型、柱高5.2m、線条9.2m、地線は艇体接地