先の土曜日、猛暑の中、近郊の大和駅前で月に一度開催される青空骨董市に出向き、幸いにも旧軍無線機材に関わるアクセサリーを入手する事が出来た。当日は台風一過、酷い暑さであったが、古物好きの猛者達はひるまず、今回も又市は大盛況であった。 さて、会場に到着ののっけより「エジソンバンド」を発見し、購入しようと手を伸ばしかけた途中で、他の好事家拾われてしまった。オリジナルのベルトが付いた良品で、価格は僅かの1,000円であり、誠に残念であった。 エジソンバンドは額に装着する熱放射器で、これを付けると頭部より熱が発散され、頭脳明晰となり、勉強が進み、結果、頭が良くなる優れものである(?)。本品は戦前の少年雑誌で盛んに宣伝され、効能を信じ、小遣いを巻き上げられた少年も数多く居たと考えられる。戦後、昭和30年頃まで販売されていた様であるが、小生の記憶にはない。資料としては面白く、是非入手したいと考えていたが、絶好の機会を逃してしまった。 ところで、前回に引き続き、馴染みの業者が今回も旧軍無線機材やラジオに関わるジャンクを持ち込んで居た。知人の話によると海軍航空機材用の長波延長線輪(空中線同調器)が有った様であるが、小生が到着した時は既に無かった。話から、本機は99式艦上爆撃機や彗星等、海軍の二座航空機に搭載された、96式空2号無線電信機の長波延長線輪であったと考えられる。当館は本空中線同調器を所蔵しておらず、エジソンバンドと同様に入手する事が叶わず、誠に残念であった。 エジソンバンド、空中線同調器と、後手、後手に回り、誠に冴えない状況ではあったが、良い事もあり、ジャンク品の中に陸軍の野戦用電鍵及び受話器を発見し、之を入手した。驚いた事に、電鍵は原状を完全に保っており、オリジナルのコード、プラグが附属していた。陸軍の野戦用電鍵がこの状態で見つかることは希で、誠に幸いな拾い物であった。 かくして、猛暑の中、ジャンク漁りは終了した。前回に引き続き、今回も旧軍に関わる若干の入手物があり、小生にとって、誠に素晴らしい骨董市巡ではあった。しかし、意識が遠のくほどの暑さの下では、ジャンク漁りも命がけである事を実感した。96式空2号無線電信機原型諸元用途: 2座航空機搭載送信周波数: 長波300-500KHz、短波5,000-10,000KHz受信周波数: 長波300-500KHz、短波5,000-10,000KHz電波型式: A1(電信)、A2(変調電信)、A3(電話)送信機入力: 100W送信機構成: 水晶(長波1、短波3装備可)又は自励発振UZ-510、電力増幅UZ-510 x2並列使用、第3格子変調受信機構成: スーパーヘテロダイン方式・AGC機能付、高周波増幅1段UZ-6D6、周波数混合Ut-6L7G、第一局部発振UY-76、中間周波増幅1段UZ-6D6、検波・低周波増幅1段Ut-6B7、第二局部発振(BFO)UY-76、低周波増幅2段UZ-41、側音発振UY-76中間周波数: 635KHz送信電源: 直流変圧器、入力12V・出力1,000V受信電源: 振動式直流変圧器、入力12V・出力250V空中線装置: 固定式・垂下式、地線は機体設置構成掲示資料捕捉 掲示写真@がタッチの差で買いそびれたエジソンバンドである。装着用のバンドも付いた良品であった。使用目的は異なるが、炎天下で額に装着すれば、放熱効果が期待できるかも知れない。 写真Aは同じく買いそびれた96式空2号無線電信機を構成した長波延長線輪である。航空機機材用の長波延長線輪は空中線同調機能と併せ、長波帯に於ける送信機の陽極同調回路を構成する物が多い。しかし、本器は空中線電流計を装置して居らず、このため、機能は空中線同調のみに特化した構成で、空中線同調確認用の高周波電流計は無線機本体の計器を兼用したと考えられる。 写真Bは今般入手した陸軍野戦機材用の電鍵と受話器で、共に原状を維持した良品であった。 写真Cは96式空2号無線電信機の原型で、左が受信部、右が送信部である。本機の送信部は2周波数のプリセット構成で、計器(高周波電流計)下部の転換器で、一挙動により周波数の転換を行う事が出来る。