この度、先の陸軍夜間戦闘機用接敵レーダー「タキ2号」の構成機材に続き、同陸軍の機上用哨戒レーダー「タキ3号」の電源装置二基を入手した。 陸軍の機上用レーダーについては之まで、国内外に於いて残存機材が確認された事はなく、当館が「タキ2号」、「タキ3号」の構成機材を併せ入手出来た事は誠の驚きである。入手先は同一の業者であるが、今回の電源が最後の所蔵物との事であった。 タキ3号は75MHz帯を使用した陸軍の中型機用哨戒レーダーであるが、諸般の事情により、導入途上で研究は放棄された。本機について日本無線史(陸軍編)には、「タキ3号は一応研究を完了していたのであったが、実用性及び量産性の点から中止することとなり・・・」と記されている。 入手機材は同一構造の電源二基であるが、明らかに一基は初期型で、他は最末期型と考えら、容積は共に22x35x45cmで、重量(末期型)は20Kgである。前期型には「タキ3号」の銘板が取り付けられ、外観は非常に良好であるが、残念ながら内部は高圧、低圧整流器部を除き取り払われ、がらんどうの状態であった。 末期型電源は整流器のマウントに木材が使用されるなどし、当時の困窮を如実に示してはいるが、取り外された計器2個以外に然したる欠品はなく、資料としては誠に良好な状態であった。 本電源の供給電圧は送信機用4,000V、変調機、波形表示ブラウン管用高圧1,800V及び、低圧用250Vであるが、一次入力は三相交流100V(400Hz)で、整流は全回路がセレンによる三相全波整流構成である。 「タキ3号」の開発元は多摩陸軍技術研究所駒場研究室(東京帝国大学航空研究所)であるが、試作、製造は三菱電機により行われ、電源内部には「合格」と赤印が押された「監督官検査済印」札が添付されていた。先の理由により、「タキ3号」の導入は途上で中止されたが、今般入手の電源から推察して、本機は相当数が製造され、実働部隊に於いて試験運用が行われたと考えられる。掲示資料補足 掲示組写真@は今般入手したタキ3号の電源で、左が前期型、右が末期型である。下段上部の接線端子は送信機用高圧4,000V、変調機、波形表示ブラウン管用高圧1,800Vの供給用である。下部の端子は送信機、受信機、波形指示器電源供給用及び、交流電源100Vの入力用である。 写真Aは末期型電源内部で、下段の変圧機は高圧発生用、上段は整流器部である。高圧、低圧電源の整流は、何れもセレンによる三相全波整流構成である。 写真Bはタキ3号の主要構成機材で、左が電源装置、中央が送信機、右端が波形指示装置である。送信機に奥行きは無いが、写真から推測すると前面サイズは30x60cm程あり、中型機用としてはかなりの容積である。(写真出典: 国会図書館憲政資料室返還資料「Japanese Army Radar」) 写真Cは之までに入手した陸軍機上用レーダー関連機材で、左より変調器内蔵型タキ2号送信機、タキ2号変調機、タキ2号初期型送信機、タキ3号前期型電源及び整流器部、タキ3号末期型電源である。