先般、ご所蔵主の格別のご配慮により、帝国陸軍航空隊の対空通信機材である「地2号無線機」を構成する、送信機用発動発電機を入手した。当館は之まで、本機は大型で、重量物でもあることから、現存機の発見は不可能であろうと考えていた。このため、今般の入手は誠の驚きである。 当該発動発電機は東京発動機株式会社製で、製造は1943年(昭和18年)の12月である。本機の程度は非常に良好で、本体と併せ、鉄製フレキシブルパイプ3本で構成される接続式排気管及び消音器や、配電盤(無し)と送信機を繋ぐオリジナルの接続コードも付属していた。 発動発電機本体は2.2馬力の2サイクルエンジン及び発電機により構成され、重量は約80Kg、出力は高圧が1,500V及び750V、低圧が12Vである。発電機出力は配電盤を介し送信機に接続されるが、残念ながら当館は本配電盤を所蔵していない。「地2号無線機」 本機は1939年(昭和14年)より暫時導入された陸軍航空部隊の主要対空機材で、1934年(昭和9年)に導入された94式対空2号無線機の後継機で、諸元は以下の様な物である。地2号無線機諸元用途: 対空通信通信距離:500Km(A1)運用周波数原型: 送信1,500-10,000KHz、受信140-15,000KHz(8バンド)2型: 送信2,500-10,000KHz、受信2,500-10,000KHz(3バンド)電波型式: A1(電信)、A2(変調電信),A3(電話)送信機出力: 電信150w、電話40w送信機構成: 水晶又は主発振E-2053、電力増幅E-2057、格子変調E-2053受信機構成: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅(UZ-6D6)、周波数混合(Ut-6L7G)、局部発振(UY-76)、第1中間周波増幅(UZ-6D6)、第2中間周波増幅(Ut-6B7五極部)、BFO(UY-76)、検波(Ut6B7二極部)、低周波増幅(UZ-41)中間周波数: 長波帯65KHz、短波帯450KHz送信電源: 2.2馬力発動発電機、交流式電源空中線: 逆L型、柱高10m、水平長20m地線: 地網2枚 なお、現在発動機はオイルによりピストンが固着し回転ができない状態で、このため、点火系の動作確認も行えていない。しかし、目視による点検では、各部の状態は良好のため、時間を掛ければ、運転は可能と考えられる。