タチ200号1型は多摩陸軍技術研究所(多摩研)が大戦末期に開発を進めた「特殊飛翔体誘導装置(1型)」の地上装置であるが、本機は1944年(昭和19年)の末に導入された対空射撃管制レーダー「電波標定機改4型(タチ31号)」の一部改修型である。 タチ31号は多摩研の第3科長であった佐竹金次大佐の企画により、既設の「電波標定機2型(タチ2号)」にドイツ空軍の対空射撃管制レーダー「FuMG-62D・ウルツブルグD型」の機能を転用し、短期間で開発が行われた対空射撃管制用レーダーである。本機の性能は既設機材に比べ良好で、直ちに「タチ31号」として兵器化され、実戦配備が進められた。この時期、ウルツブルグD型の国産化(タチ24号)が進められていたが、本機は試験運用段階で終戦となり、タチ31号は陸軍に於いて実戦配備が行われた射撃管制レーダーの最終型となった。タチ31号緒元用途: 射撃管制周波数: 200MHz繰返周波数: 3,750Hzパルス幅: 2μs尖頭出力: 10kW空中線: 3素子垂直八木4基、上下・左右配置、金網式反射機付、送受兼用、位相環合成方式送信機: 発振管SY-5( P.P.)変調方式: パルス変調、変調管P-555受信機: ダブルスーパーヘテロダイン方式、第1検波(UL-6306)、第1局部発振(UN-955)、第1中間周波増幅3段(RH-2 x3)、第2検波(RH-2)、第2局部発振(RH-2)、第2中間周波増幅3段(RH-2 x3)、第3検波(RH-2)、低周波増幅(RH-2)中間周波数: 第1中間周波22.5MHz、第2中間周波6MHz帯域幅: 500KHz利得: 110db以上測定方法: 等感度方式信号表示: Aスコープ方式掃引幅: 0-40km測定距離: 40kmコニカルスキャン式空中線指向特性の発生 タチ31号の空中線装置は4基の3素子八木型空中線、金網式反射器、各空中線を合成する回転位相環(回転式ゴニオメーター)及び、指向特性分波器により構成され、運用は送受信兼用で、輻射は垂直偏波方式である。本装置はコニカルスキャン構成の等感測定方式で、金網状反射板の前面に4基の3素子八木型空中線が上下左右に装置され、各空中線は位相環により合成される。移相環は1/25秒で回転し、位相合成により中心軸が10-15°外側に傾いて回転する単一の紡錘状指向特性を発生させる。 位相環には回転子に連動する指向特性分配器が装置され、左・右、上・下の位置で「位置確定信号(直流電圧)」を発生させ、照準器の表示管回路に出力する。各照準器は位置確定信号により空中線指向特性の上・下、左・右の位置で受信反射波を抽出し、各照準器に等感度方式で表示する。 機上装置タキ200号1型を搭載する高速戦闘機は、敵機より反射するコニカルスキャン式放射ビームの中央を飛行し標的に接近する。タチ31号の改修 機上装備タキ200号1型に同期信号を送るため、コニカルスキャン式空中線指向特性を発生させる位相環の回転に同期して、1/25秒毎に同期用パルスを発生させる機能が変調回路に付加された。本改修型がタチ200号1型であるが、改修による測定機能への影響はない。掲示資料補足 掲示はタチ31号の概念図である。上部右側にタチ31号をタチ200号1型とするための改修カ所を掲示した。 なお、改修資料の出典は「JAPANESE WARTIME MILITARY ELECTRONICS AND COMMUNICATIONS SECTION Y JAPANESE ARMY RADAR」である。