先般Net Auctionに戦前、戦中にマツダ(東芝)が製造したメタル管が多数出品された。マツダが製造しメタル管の殆どは海軍に納められ、機上用方向探知機「1式空3号無線帰投方位測定機」や、編隊内通信用の「98式空4号隊内無線電話機(大型機用)」、「1式空3号隊内無線電話機(小型機用)」等に使用された。 当館は海軍で使用されたマツダ製金属管を収集しており、これを機に所蔵管種を調べてみた。東芝が戦争終了までに製造したメタル管は以下の15種類と考えられ、カッコ内は装置への実装を含む当館の所蔵管数である。結果、当館はUS-6F6、US-6N7、US-61の三種類が未所蔵である事が判明した。これらについては今日迄巡り合った記憶が無いので、相当に生産量が少なかったものと考えられる。US-6A8(2)、US-6B7(3)、US-6C5(9)、US-6F6、US-6F7(2)、KS-6H6(1)、US-6J5(5)、US-6J7(28)、US-6K7(20)、US-6L7(2)、US-6N7、US-6Q7(4)、US-6V6(12)、US-61、US-6305(10) 「電子管の歴史」(日本電子機械工業会電子管史研究会)には東芝に於ける金属製真空管の製造に関し、「昭和13年頃から軍需用として金屬真空管の試作並に製作に着手し、同14年までに下記品種の真空管を完成需要に応じた。」との記録がある。海軍に於いて、マツダ製メタル管を最初に使用した機材は大型機用の編隊内通信装置「98式空4号隊内無線電話機」と考えられる。本機の制式化は1938年(昭和13年)である事から、海軍は東芝でメタル管が製造されると直ちにこれを調達し、使用した事になる。 ちなみに、「98式空4号隊内無線電話機」の運用周波数は30-50MHzで、スーパーへテロダイン式受信機の構成管は高周波増幅1段(US-6K7)、周波数混合(US-6A8)、局部水晶発振(US-6J7)、中間周波増幅1段(US-6K7)、検波・低周波増幅1段(US-6B8)、低周波出力増幅(US-6V6)、側音用低周波発振(US-6C5)である。 一方、住友通信工業も以下の類似金属管を製造し、これらは主に陸軍で使用された。この内、MC-804-Aは戦闘機用無線電話機「99式飛3号無線機」の受信管として、また、MB-850は機上用の各種レーダーに使用されている。残念ながら、現在当館が所蔵する住友製メタル管はMC-804-A及びMB-850の2管種のみである。MB-810A(US-6J7相当)、MB-811A(US-6K7相当)、MB-812A(US-6A8相当)、MB-813A(US-6Q7相当)、MB-816(US-6F6相当)、MB-850(US-6305相当)、MC-804-A(US-6F7相当)、DB-817(KS-6H6相当)、TB-818A(US-6C5相当)US-6F6の入手 先日徘徊より帰宅すると、小田原在住のアマチュア無線家JA1EGI、日比野正男氏よりマツダ製のメタル管US-6F6が一本届いており、誠にたまげた。 日比野氏はFBの書き込みで小生がUS-6F6を探していることを知り、氏にとっても貴重な本管を送って下さった。日比野氏には以前より多くの旧軍関連物品を当館にご提供頂いている。氏の変わらぬご協力に、心より感謝を申し上げる。 今般の入手により、当館が未入手のマツダ製メタル管はUS-6N7及びUS-61の二本となった。早くも今月は年の瀬である。年内は無理であろうが、何としても来年中にはマツダ製メタル管のコレクションを完成させたいものである。掲示写真補足組写真@は当館が所蔵するマツダ製メタル管の一部である。写真Aは海軍の大型機用編隊内通話装置である「98式空4号隊内無線電話機」である。写真Bは海軍の機上用方向探知機「1式空三号無線帰投方位測定機」である。写真Cは日比野正男氏から提供いただいたUS-6F6である。