横浜旧軍無線通信資料館掲示板


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    画像タイトル:img20210107191329.jpg -(230 KB)

    編纂資料と霜田光一先生 名前: 事務局員 [2021/01/07,19:13:29] No.9322
     昨年末、当館は日頃ご教示を頂いている東京大学名誉教授霜田光一先生(文化功労者)に、現在進めいてる旧軍無線機材及び電波兵器の編纂作業に係る以下の資料をお送りした。

    ・海軍「2号電波探信儀2型」--センチ波水上警戒用レーダー
    ・海軍「19試空3号電波探信儀30型(51号)」--センチ波機上用P.P.I.式レーダー
    ・海軍艦艇用電波探知機--その開発と「E-48」センチ波電波探知機
    ・英国空軍地表探索レーダー「H2S」--世界初の機上用P.P.I.式レーダー
    ・ドイツ海軍に於けるセンチ波帯電波探知機の開発--探知機各型
    ・ドイツ空軍地表探索レーダー「FuG-224(berlin)」--ドイツ空軍初の機上用P.P.I.式レーダー

     上記資料の何もが、当時海軍技術研究所電波研究部に於いて、霜田先生が学生の身分でありながらその開発に参加、又は研究に関連した事柄である。

     現在当館が進めいてる旧軍無線機材、電波兵器に係る編纂作業は間口が広がり、脱稿、出版には今暫く時間を必要とする。この為、昨年100歳となられた先生がお元気なうちに、関連記事についてだけでもその概要を知って頂きたく、今般の資料送付となった。

     しかし、驚いた事に、以降先生より提供資料に関わる教示や誤字、脱字に至る指摘を含め、頻繁にお手紙が届く事になった。ご高齢にも関わらず先生の知識、記憶、気力は衰えを知らず誠にご壮健で、その教示は的確に小生の疑問を解消する。

     75歳の凡庸が、100歳の「日本のレーザーの父」と称される大物理学者に教えを乞う。他から見ればこの状況は誠にシュールであろうが、事務局員には至福の時で、この時間が長く続くことを心より願っている。

    霜田光一先生とセンチ波
     先の大戦後期、東京大学理学部大学院生であった霜田光一先生は海軍技術研究所電波研究部の菊池正士技師(大阪大学教授-物理学者)門下として、1944年(昭和19年)の初めにセンチ波用の鉱石検波器を開発された。

     本鉱石検波器が海軍電波兵器の開発に果たした役割は非常に大きく、技術研究所電波研究部はこの検波器によりセンチ波用電波探知機を開発し、また、不振を極めていた水上監視用22号センチ波帯レーダーの受信機は完全なスーパーヘテロダイン化が達成され、装置は漸く実用の域に達した。

     ところで、小生は以前、先生のご自宅でセンチ波用鉱石検波器の「開発に関わる経緯」をお伺いした事があった。この折、その概要を当館が編纂作業を進めている仮称「横浜旧軍無線通信資料館」にご寄稿頂きたくお願いし、その後以下の2論文のご提供を受けた。

    1.「電波探知機・電波探信儀用鉱石検波器の研究」
    2.「戦時中の米軍レーダーの調査」

     「電波探知機・電波探信儀用鉱石検波器の研究」は、先生が如何にして其れ迄の常識を破り、センチ波用鉱石検波器を開発されたかの記録で、誠に感激する。

     また、「戦時中の米軍レーダーの調査」は1944年11月21日に有明海に墜落したB-29より回収されたセンチ波レーダー、及び同年10月24日、レイテに向かう日本艦隊を攻撃後、暗礁に乗り上げ放棄された米国潜水艦Darterより回収された水上警戒用レーダーに関わる調査記録で、当時の米国レーダーを知る誠に貴重な一次資料である。

     上記の2論文については編纂作業が遅れている為、出版に先行し、当館のHPで公開している経緯がある。この為、戦中のレーダーに興味のある方には、本稿の閲覧を強くお勧めする。

    霜田光一履歴
     1920年生まれ。理学博士。1943年東京帝国大学理学部物理学科卒業。1948年東京大学理学部助教授。1959年同教授、1960年理化学研究所主任研究員兼任。1981年東京大学名誉教授、慶応義塾大学理工学部教授(1986年迄)。
     元レーザー学会会長、元日本物理教育学会会長。1974年東レ科学技術賞、1980年日本学士院賞、1990年勲二等瑞宝章、2008年文化功労者。研究分野はレーザー分光、量子エレクトロニクス、物理教育。

    掲示組写真補足
     写真@は当館が霜田先生にお送りした編纂関連資料である。写真Aは霜田光一先生で、手にされているのは高校生の折自作された8mm映写カメラである。Bは霜田先生よりの返信である。写真Cは霜田先生が開発されたセンチ波用鉱石検波器を七欧無線が製品化した量産型である。




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