横浜旧軍無線通信資料館掲示板


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    画像タイトル:img20210919194355.jpg -(275 KB)

    陸軍戦車用無線機材 名前: 事務局員 [2021/09/19,19:43:55] No.9395
     当館(Yokohama WW-2 Japanese Military Radio Museum)は最近、帝国陸海軍無線機材、電波兵器の編纂作業に関連し、陸軍の戦闘車輌用無線機材についての纏めを進めている。これらの基本文章は既に数年前に書き上げているが、今回は関連写真や紙資料と共に、最終形態を念頭に校正作業を進めている。

     取り敢えず各無線機の各部写真を取る必要があり、展示場所より取りだし撮影を行ったが、全てを事務局員一人で行うのは誠に大変であった。しかし、この撮影は最終形態では無く、出版に際しては専門家に撮影を依頼する予定である。

    帝国陸軍戦車部隊
     帝国陸軍は1925年(大正14年)に第1戦車隊及び歩兵学校戦車隊を創設し、戦車及び運用の研究を始めた。1933年(昭和8年)になり、これらは戦車第1連隊と戦車第2連に改編された。その後も戦車連隊は増設され、日中戦争の勃発もあり、1938年(昭和13年)迄に8連隊が編成された。

     第二次大戦前期の標準的戦車連隊は4個中隊で構成され、そのうち第1中隊は軽戦車を、第2から第4中隊は中戦車を装備していた。しかし、これら戦車の運用は歩兵部隊との協同作戦を目的としたものであった。

     1942年(昭和17年)になると対戦車戦を目的に、戦車連隊を中核とした機甲部隊が編成されるようになった。しかし機甲部隊はその後解体され、帝国陸軍においては、戦車部隊は歩兵師団の支援を目的とし、対戦車戦を想定した運用が重要視される事は無かった。

    陸軍戦車と無線機材
     帝国陸軍に於いて戦闘車輌に無線機材の装備が始まったのは1932年(昭和7年)からである。この時期の戦車は英国のビッカースC型中戦車を基に開発された小型戰車で、導入時期に無線装置の装備は予定されていなかった。このため開発された無線機は狭小な車内の構造に併せた形で設計され、また、この時期の戦車はガソリン機関を動力としていたので、高圧点火系統より発生する雑音の抑圧に苦労した。しかし、この問題はその後、デーゼル機関の採用により解消した。

     陸軍は1937年(昭和12年)に97式中戦車(Type 97 Medium Tank))を導入し、戦車部隊はその形態を確立した。当初これらは96式4号戊無線機(Type 96 Mark 4E Radio Set)を搭載したが、間もなくして、陸軍第四次制式制定作業(Army fourth system sanctioned work)の一環として、車輌無線機乙(Vehicle Radio Set B)、車輌無線機丙(Vehicle Radio Set C)が開発され、97式中戦車他新型戦車への搭載が進められた。

    車輌無線機乙(Vehicle Radio Set B)
     本機は2系統通信用の短波機材で中間指揮官車に搭載され、上級指揮官車、下級指揮官車との通信を行った。戦車での無線運用は、電話通信を車長が行い、電信の運用は無線担当が行った。

    車輌無線機乙諸元
    用途: 装甲装軌車、中間指揮官車用2系統通信機材
    電波形式: 電信(A1)、変調電信(A2)、電話(A3)
    通信距離: 行動時A1-10Km、A2・A3-4km、停止時 A1-30Km、A2・A3-8km
    周波数: 送信機3,500-5,500KHz、受信機1,500-5,500KHz
    送信機: A1出力15W、A2・A3出力10W、水晶又は主発振UY-807A、電力増幅UY-807A、陽極変調UY-807A、2周波数プリセット機能装備
    受信機: スーパーヘテロダイン方式(高周波増幅、周波数変換、第1局部発振まで2系統)、高周波増幅1段、第1局部発振水晶制御、中間周波増幅1段、低周波増幅2段、構成真空管は三極・五極複合管Ut-6F7 六本
    中間周波数: 400KHz
    通信方式: ブレークイン(電信)、プレストーク(電話)方式
    電源装置(送受信共用): 直流回転式変圧器、入力24V、出力低圧24V、高圧400V
    空中線装置: 車輌装備垂直型2m、地線は車体接地方式

    車輌無線機丙(Vehicle Radio Set C)
     本機は戦車相互の電話通信用機材で、運用周波数帯はセミVHFである。必要に応じ、車輌無線機丙は管制器を介し車輌無線機乙と接続され、3系統の通信装置を構成することが出来た。

    車輌無線丙諸元
    用途: 戦車相互間通話
    通信距離: 500m
    周波数:20,000-30,000kHz
    電波形式: A2(変調電信)、A3(電話)
    送信出力: 6W
    送信機: 発振Ut-6F7(五極部)、電力増幅UY-807A、音声増幅Ut-6F7(三極部)、陽極変調UY-807A、インターホン用低周波増幅兼較正用水晶発振Ut-6F7、較正周波数21,24,27,30MHz(原発振3MHz)
    受信機: 他励式超再生方式、高周波1段増幅、超再生検波、低周波2段増幅(Ut-6F7 x3)
    電源: 回転式直流変圧器、入力24V、出力400V(送受信部兼用)
    空中線: 垂直型2m自動起倒式、地線は車体接地方式

    掲示写真補足
     掲示写真@は96式4号戊無線機を構成する送信機と受信機である。残念ながら当館は本機の電源及び収容ケースを所蔵していない。
     掲示写真Aは1937年に導入された97式中戦車で、以降陸軍は各種の大型戦車を開発するが、対戦車戦を想定した機甲部隊の創設、維持には大きな興味を示さなかった。
     写真Bは2系統通信機材である車輌無線機乙で、当初は96式4号戊無線機に変え、導入が進んだと考えられる。しかし、実際に本機が2系統通信機材として運用されることは、殆ど無かったと考えられる。
     写真Cは車輌無線機丙で、本機は使い勝手の良い無線電話機であった。驚くことに、車輌無線機丙は装備の管制器を介し車輌無線機乙と接続することが出来、必要に応じ3系統の通信装置を構成することが出来た。

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