先般「ヤフオク!」に米軍の航空機救難用無線機RT-159/URC-4が出品された。この無線機は航空機に搭載される救命筏等の備品で、遭難時に、救難機との通信に使用するが、当然の事としてその運用は航空機の国際非常通信周波数である。 本機は非常通信用機材のため、映画の救難場面にはよく登場するが、事務局員にはジョージ・チャキリスが主演した「芦屋からの飛行」が記憶に残っている。当時ジョージ・チャキリスは「ウエストサイド物語」の好演で人気があり、この映画を見た方は多いと考える。 事務局員はこの救難無線機に若干の思い出があり、オークションの推移を注視したが、価格が1万円を超えたため応札は諦めた。程度も不良であった事から、4-5千円が妥当な価格と考えていた。装置構成 本機は2バンドのAM機材で、運用周波数はVHFが121.5MHz、UHF(機材表記)が243MHzで、両周波数は逓倍関係にある。装置は無線機RT-159と之にケーブルで接続する水銀電池より構成されるが、本体は非常に小型で、構成管の殆どはサブミニチュア管である。本来243MHzはVHF帯であるが、何故かRT-159にはUHFと表記されている。 RT-159はトランシーバー構成で、送信部は水晶発振・周波数逓倍方式で、変調は陽極変調である。受信部は超再生検波方式で、検波回路はVHF帯、UHF帯が独立した構成である。また、AM変調回路は受信部の低周波増幅回路との兼用である。 送信部の発振用水晶片は筒型のCR-24/U で、発振周波数は30.375 MHzである。URC-4が導入されたのは朝鮮戦争の頃と推察されるが、当時としては最新のオーバートン用の水晶片と考えられる。 VHF運用の場合は、原発振周波数30.375 MHzを二逓倍二段構成で行い、目的の121.5 MHzを発生させている。また、UHF帯はVHF出力を更に二逓倍し、243MHzを得ている。送信出力は共に、200mW程度と推測される。 この無線機の特徴は、装備のダブレット型空中線装置にある。使用時、装置上部の空中線部を引き上げると、筐体より饋電フィダーとなるパイプ二本とエレメント二本が現れ、エレメントは頂部で左右に展開する。VHF、UHF帯は二逓倍の関係名あり、このため、UHF帯を使用する場合は、エレメントを1/2の長さに短縮する構造である。URC-4に関わる若干の思い出 事務局員が高校生の頃、都内及びその周辺には米軍の廃品を扱う解体ヤードが数多くあり、CQ誌で知られたジャンク屋の多くはこれら業者と協同で入札を行い、落札物を分け合っていた。 解体業者の仕事は購入した機材を分解し、各金属に分別し販売することであり、其れがどのような物であるのかに関心は無い。このため、解体が後回しにされた無線機や構成部品、真空管、水晶片等がどこのヤードにも散乱しており、土日になるとこれらを求め、無線クラブの仲間と各所を巡った。また、時には米軍ジャンク好きの顧問の先生を帯同することもあった。 この時期よく目にしたのが米軍の携帯式無線機SCR-300/BC-1000及び、車輌用FM無線装置SCR-608を構成した送信機BC-684と受信機BC-683であった。 BC-1000は大量にありすぎジャンクとしては売れなかったのか、その見事な同調バリコンだけが取り外され、あとは鉄くずとして処理されていた。また、送信機BC-684を構成した水晶片FT-241はよく解体場所の周辺に散乱していたが、何処でも水晶濾波器の製作に適した450KHz周辺の物は既にジャンク屋に抜き取られていた。 時折未使用のURC-4一式を見かけることがあっが、これらは別扱いで、当時の高校生には手の出ない値段であった。しかし、ある時、顧問の先生が未使用のURC-4一式と受信機BC-683を裏でコッソリ購入していた事が分かり、我々を驚かせた。 後日、先生は購入した機材を学校で、自慢げに披露してくれた。当時3A5単球式トランシーバの製作がブームであった我々は、URC-4の空中線装置やその素晴らしき内部構造に目を奪われ、誠に感激し、これが本物の携帯式トランシーバーの造りか、と納得した。結果、その形状は事務局員の脳裏に焼き付くことになり、今日まで消えることはなかった。