昨年の3月、JA9AA円間俊一氏がなくなられた。円間氏は事務局員がNTT渋谷統制無線中継所勤務時代の上司で、同好の士でもある事から親交が深かった。しかし、事務局員はNTTを早期退職の後「退職者の会」には所属せず、このため、物故を知るのに時間が掛かった。 円間氏は生粋のアマチュア無線家で、DXをこよなく愛し、DXCCでは実に372エンティテを獲得した。その中でもヨルダンの故フセイン国王JY1とのQSOは特別であったようで、「国王が僕のコールサインに敬意を払い、Yes Sirと云ってくれた」と、誠嬉しそうに話されていた。 また、円間氏はコリンズ教の信者で、この時期の主装置はSラインであったが、米国よりオリジナルのシルバードマイカ等を入手し、自身でその交換を行っていた。「コリンズは凄いぞ、部品を交換してもマニュアル通りに調整すれば、全てが規格内に収まる」と誠に楽しげであった。 渋谷統制無線中継所の最寄り駅は東横線の代官山駅であるが、東側の丘を超えると目黒で、そこにはJA1ADD故中島兵吾氏が営むファインアンテナ研究所があり、よく円間氏と共に訪ねた。この場所はマニアの穴で、中島氏や居合わせた同好の士との語らいは尽きることが無かった。 当館を開設して10年ほど経った頃、円間氏が遠路来館され、この折り、陸軍の地2号無線機(送信機)が写るシャックの写真を資料として頂いた。掲示の如く、当初円間氏のコールサインはJA2WA であつたが、1954年(昭和29年)にJA9がJA2より独立し、JA9AAを得られた。 円間氏が逝かれた今日、この写真は旧軍無線機材の資料としてだけでは無く、氏の思い出の品ともなった。本写真については、旧軍無線機材の編纂作業に関わる一項、「旧軍無線機材とアマチュア無線」の中で使用したいと考えている。