先般入手したドイツ空軍のE52a-1型受信機が動作を始めた。しかし、時折局部発振回路が発振を停止するため、オーバーホールが必要である。短期間の使用ではあるが、光投影式ダイアル機構、帯域連続可変機構、モーター駆動式4周波数登録機構等、何れの機能も圧巻である。 本受信機は1941年(昭和16年)にTelefunken 社が威信をかけ開発した最高級受信機で、光学投影式ダイアル機構を具え、1.5〜25MHz帯を5バンドで受信する。本機はKolnの愛称で呼ばれ、総生産台数は約2,500台、短波帯の傍受、通信、方向探知等広義に使用された。 Telefunken 社はE52型受信機の開発に際し、「向こう15年間は他社の追従を許さない高性能受信機の開発を模索した」との逸話は、ドイツの収集家よりよく聞く話である。事実、本受信機は回路構成、構造、機能、性能、安定性、操作性等何れにおいて、当時にあっては比類無き秀作で、今日でも各国蒐集家の憧れの的である。 E52型にはa-x、b-x等々、11種にも及ぶバージョンが有るが、大半は受信周波登録(プリセット)機能と可変BFOが省略されたE-52b-1型である。ちなみに、今般入手の受信機は周波数プリセット、可変BFO機能を具えたE-2a-1型である。E52の開発 1939年(昭和14年)、独逸空軍は40KHz〜150MHzをカバーする高性能多機能型汎用受信機群の研究開発をTelefunken 社に依頼した。 1941年(昭和16年)には4機種の開発が完了し、1942年(昭和17年)からE51型(40KHz〜1.6MHz)、E52型(1.5〜25MHz)、E53型(24〜68MHz)、E54型(60〜150MHz)の4機種の生産を逐次開始し、1945年(昭和20年)の敗戦迄これ等を使用した。また、戦後東ドイツで引き続き生産が行われた。E52a型受信機装置概観 本受信機は構成各部がプラグインユニット化された構造で、光投影式ダイアル機構、受信帯域幅連続可変機能、モーター駆動式4受信周波プリセット機能等の特徴を具えている。☆プラグインユニット構造 本受信機の構成各部はユニット化され、整備性の向上が図られている。各部はアルミダイキャスト製の枠内に真空管、構成部品を組み込んだ構造で、堅牢で安定した動作を実現している。☆光投影式ダイアル機構 本同調機構はガラス円盤にエッジングされた同調目盛を、光源、レンズ、反射鏡により磨りガラスに投影する方式で、極めて精細な同調操作が可能である。ちなみに、6-10MHz帯の最小読み取り周波数は5KHzである。☆受信帯域幅連続可変機構 本受信機は混信、混変調対策として特別な回路構成を具えている。 高周波増幅・周波数混合部は復同調2段(4連バリコン使用)構成である。中間周波増幅段にはブロックフィルターに加え、2個の水晶振動子と4連式差動バリコンで構成される可変式水晶濾波回路を装置している。 これらの構成により混変調を低減し、混信対策として200Hz〜10KHzの帯域幅連続可変を実現している。☆受信周波プリセット機能本機能は機械式4受信周波数登録装置で、その登録、呼び出しはモーター駆動による一挙同である。E52型受信機諸元(a-x、b-x)構造: 構成各部プラグインユニット方式構成: 高周波増幅2段、中間周波3段のシングルスーパーヘテロダイン方式各部構成: 複同調高周波増幅2段、周波数変換、自励局部発振、可変帯域中間周波増幅3段、検波・AGC、BFO発振、低周波増幅構成管他: RV12P2000x10、整流管RG12D60x2、定電圧放電管MST140/60Z、バイアス電圧安定化管Urfa610、バイブレーターMZ6001受信周波数: 1.5〜25MHz(5バンド)受信周波数表示: 光投影精細直読表示、扇型指針疎直読表示同調操作: 減速比1:8(粗)、1:90(精)の2段操作周波数プリセット機能(a-xバージョン): 任意の4周波数(読出しは電動式)電波形式: A1・A3手動感度調整、A1・A3自動感度調整中間周波増幅: 中心周波数1MHz三段増幅、帯域幅200Hz〜10KHz連続可変BFO: ±5KHz連続可変(a-x)、900Hz水晶発振空中線入力: 同軸、長、短ロングワイヤー用各種接栓電源: 交直両用110〜230V(40〜60Hz)、DC12V(4A)容積・重量: 245x446x360mm、41Kg