当館が所蔵するドイツ軍の文字伝送装置Feldfernschreiberの修復が、技術調査員である安齊穗積君によって完了した。 本機はドイツ国防軍(陸軍・海軍・空軍)が1935年に導入した通称Hellschreiber(ヘルシュライバー)と称される文字伝送機の軍用型である。幸いにも大きな不良箇所、構成部品の欠品も無く、低周波回路を構成する蓄電器の交換や、文字信号発生機構の清掃他によりその機能は回復した。 所蔵が一台のため、送受信を行う事は出来ないが、送信文字信号を録音し、これを受信信号として本機の動作試験を行ったが、文字の送信、受信ともに快調である。残念ながら等掲示板は動作画面をUp出来ないので、関連写真を掲示した。ヘルシュライバー 本機は機能がファックスに類似したテレタイプの一種で、1925年にドイツ人のルドルフ・ヘル(Rudolf Hell)が発明した。本機では、文字を白黒の画像要素(ピクセル)のマトリクスとして伝送し、5単位のテレタイプシステムと比べ機械構造が非常に単純で、また、長距離有線伝送路や無線伝送路で使用する際に、変復調器を必要としない。軍用Feldfernschreiber諸元用途: 文字伝送伝送方式: 文字ピクセル信号変換、ドット印字文字ピクセル: 7x7伝送速度: 150文字/分伝送信号周波数: 900Hz構成回路: 伝送信号発生RV12P4000、信号増幅RV12P4000、印字回路RV12P4000、電動機制御RV12P4000電源入力: 直流12V容積・重量: 430x375x220mm、24.8kg「Feldfernschreiber」装置概要 本機は文字信号発生回路、信号増幅回路、印字回路及び電源装置により構成され、1文字7 x7ピクセルのマトリクスを900Hzのシリアル信号に変換し、文字伝送を行う。 文字変換機構は記号を含む40の文字を各7x7ピクセルの伝送用信号に変換する。掲示の組写真Bは本装置に於ける文字「E」のマトリクスで、1文字は前後の間隔スペースを含め7分割された構造で、この内中間の7x5ピクセル部分が文字を構成する。 7分割されたマトリクスは写真Cの如く、黒地で表示されるピクセル部分が金属箔に置き換えられ、シリアル構成で回転式文字ドラムの円周部に貼り付けられている。 また、その上面には、選択された文字キーに対応する信号読み出し用の触手が装置されている。この触手は低周波発振回路の出力スイッチで、ドラムが回転すると、黒ピクセル部が導通し、900Hzのシリアル信号として出力される。 上記構造により、文字ドラムには全文字分の40パターンが、また、これに対応して同数の触手が装置され、キーボードの操作により、選択した各文字を信号化する。 900Hzの文字信号は、有線・無線の伝送路に出力されると共に、信号復調回路により検波・増幅され、継電器構成のドットプリンターにより紙テープに印字、出力される。また、受信信号も同一の手順で印字される。掲示資料補足 写真@はヘルシュライバーの構成各部である。 資料Aは構成回路概略図である。 資料Bは文字パターン化の概念図である。 写真Cは回転式文字ドラムに貼り付けられた構成文字パターンで、キーボードにより選択され、触手で読み出される。 写真Dはドットプリンター部で、文字バターンの構成に従って印字する。