先般国内のNet Auctionで陸軍航空部隊の機上用「飛」各型(除99式飛4号無線機)を構成した吸収型周波数計の、収容筐を落札した。この周波数計は汎用型で、陸軍航空部隊の短波機材の全てに付加されたと考えられる。当館は本周波数計の本体及び同調コイルを所蔵しており、収容筐の入手により、漸く装置一式が揃うことになった。 本吸収型周波数計は測定器本体及び、付属のコイル二本により構成されている。測定周波数は2.5-15MHzで、同調表示はランプ点灯方式である。本体には2周波数帯の同調ダイアル指示値/周波数の置換表が添付され、使用は同調コイルを送信機の発振コイルと結合させ行う。 94式機材(昭和9年-1934年制定)以降、陸軍航空部隊の機上用無線機を構成した送信機は水晶制御方式であった。このため、本周波数計は殆ど使用の機会が無かったものと考えられる。尤も、これら送信機は水晶片を取り外すと自励式送信機として動作し、この場合は周波数の測定が必要である。しかし、大正期とは異なり、この時代に有っては、吸収型周波数計で実用の運用周波数を確定することは出来ない。99式飛2号無線機諸元用途: 中距離航空機通信距離: 500km周波数: 送信2,500-13,000KHz、受信1,500-15,000KHz電波型式: 電信(A1)、変調電信(A2),電話(A3)送信機: A1出力30W、A2・A3出力15W、水晶発振UY-807A、陽極変調UY-807A受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅2段、中間周波増幅1段、低周波増幅2段(Ut-6F7 x5)、AGC機能付中間周波数: 450KHz電源(送受兼用): 入力24V直流変圧器空中線装置: 逆L型固定式、柱高0.8m又は垂下式、地線は機体接地構成99式飛2号無線機補足 99式飛2号無線機は96式飛2号無線機の実質的継機で、軽爆撃機や偵察機、輸送機等に装備された中距離用の通信機材である。無線装置は96式飛2号無線機と同様に、一体型ケースの下段に送信機が、上段に受信機が収容され、送受信機はケース内部背面の接線により一体化され、電源は装置の左側面底部より供給される。収容ケースの容積は22x34x16cm(除前面枠)で、重量は12kg、無線装置は緩衝用ゴム紐を介し、機体に設置した専用の懸垂架に装着された。 99式飛2号無線機の構成、構造は遠距離用機材である99式飛1号無線機に類似しているが、本機の特長は、送信機が全運用周波数帯の同調を一挙同で行う可変インダクタンス式同調機構を内蔵し、空中線同調にπ型同調回路を採用している事である。 また、本機は電話通信機能に優れ、其の性能は単座戦闘機用の電話機材である99式飛3号無線機と同等であったと考えられる。飛2号の搭載予定航空機は中距離用航空機であり、主に軽爆撃機等に搭載されたが、電話機能の充実は作戦に於ける編隊内の通信を考慮したものとも考えられる。 大戦末期になり、侵入するB-29爆撃機を迎撃した複式戦闘機「屠龍」は99式飛2号を搭載し、対地通信に電話機能を多用した。本機の運用形態はA1・A2がブレークイン方式で、A3が変則(電鍵操作)のプレストーク方式である。