今般、42号電探の高角照準器(仰角測定器)を入手した。42号電探は海軍のメートル波帯の陸上設置型対空射撃管制レーダーで、標的の距離と併せ、方位角、高角を等感度方式により測定した。今日、帝国海軍の射撃管制レーダーに関わる構成機材を入手出来るなどとは、誠に信じられない事である。42号電探 海軍技術研究所は緒戦に米国陸軍の射撃管制レーダーSCR-268を模倣し、対空射撃電探の1号機となる4号電波探信儀1型(41号電探)を開発した。メートル波帯機材については41号の開発を経て、42号電探により完成の域に達した。42号電探は探照灯管制用43号電探と共に抜群の成績を収め、以降本周波数帯に於ける対空射撃管制レーダーの開発は行われなかった。入手照準器 当館(横浜旧軍無線通信資料館)は43号電探の波形選択器他を所蔵するも、42号電探については送信機の発振管TA-1504を所蔵するのみであり、今般の入手は誠に幸いであった。 当該照準器は回路構成部品に欠品は無く、原状を維持していた。しかし、波形表示用ブラウン管(CRT)BG-75A及び、信号増幅管PH-1が欠品していた。また、CRTの前面留金具及び、輝度調整器のツマミが欠落していた。 簡単な清掃を済ませ、早速所蔵のBG-75A及び構成管を装着した。欠品の輝度調整ツマミは、近日レジンにより製作を行う予定である。 なお、本機の容積は18x18x45cmで、重量は約10kgである。照準器補足 42号電探に於ける方位角、仰角の測定は、等感度測定方式により行う。本目的のため、上・下(仰角)、左・右(方位角)測定用受信空中線が4基を装置され、対向する空中線2基は1/40秒毎に切替られる。 高角照準器では、上・下空中線で受信された標的の反射波が、CRTの中央に間隔を開け、左右二本の縦線として表示される。仰角測定担当は制動ハンドルにより空中線の仰角を可変し、表示2波形の振幅が等しくなる「等感度」位置を求め、追尾を行う。 表示2波形の振幅が一致した位置で空中線は標的に正対し、空中線の傾きにより標的の仰角を精密に測定する事が出来る。また、方位角の測定原理も同一である。参考資料として等感度測定方式を概観した「方位角等感度測定概念図」を掲示した。42号電探緒元用途: 陸上用射撃管制設置場所: 防空砲台有効距離: 編隊40km、単機20km周波数: 200MHz帯繰返周波数:1,000 Hzパルス幅: 3μs送信尖頭出力: 13kW送信空中線: 複合八木型2x4受信空中線: 複合八木型2x4送信機: 発振管TA-1504 /LD-209(P.P.) x2変調方式: パルス変調、変調管TB-508C x2(並列)受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅2段(UN-954x2)、周波数混合(UN-954)、局部発振(UN-955)、中間周波増幅6段(RH-8 x6)、検波(RH-8)、低周波増幅2段(RH-8、PH-1)信号表示: Aスコープ方式測定方法: 等感度方式距離精度: 50m方位角精度: ±1゜仰角精度:± 1゜電源: 3相200V交流電源重量: 5,000kg製造: 住友・日本音響・日立・日蓄、約60台掲示資料補足 組写真@は今般入手した42号電探の高角照準器である。 写真Aは42号電探を背後より撮った写真である。 資料Bは等感度測定方式の説明概念図である。 写真Cは清掃後BG-75Aを装備した高角照準器である。輝度調整用ツマミ及び、CRTの前面覆いが欠落している。 なお、42号電探の装置概念図、入手照準器の細部写真他について以下のFacebookに掲示を行った。https://www.facebook.com/groups/1687374128228449