先の5月29日、当館(横浜旧軍無線通信資料館)が日頃お世話になっていた東京大学名誉教授で、物理学者として文化功労者であられた霜田光一先生がご逝去されました。 先生のご冥福を心からお祈り申し上げると共に、生前に当館が賜ったご協力に、心から感謝申し上げます。霜田光一先生とマイクロ波用鉱石検波器 戦中東大理学部大学院生であった霜田光一先生は、海軍技術研究所電波研究部の菊池正士技師門下として、昭和19年(1944年)の初めにマイクロ波用鉱石検波器を開発されました。 本鉱石検波器が海軍電波兵器の開発に果たした役割は非常に大きく、電波研究部はこの検波器を使用してセンチ波用電波探知機を開発し、また、不振を極めていた22号系マイクロ波レーダーの受信機は漸くスーパーヘテロダイン化が達成され、兵器として実用の域に達しました。霜田光一先生寄稿論文について 当館は霜田先生より、現在編纂作業を進めている仮称「横浜旧軍無線通信資料館」に、以下の2論文をご寄稿頂いております。1.「電波探知機・電波探信儀用鉱石検波器の研究」2.「戦時中の米軍レーダーの調査」 「電波探知機・電波探信儀用鉱石検波器の研究」は、先生が如何にして其れ迄の常識を覆し、センチ波用鉱石検波器を開発されたかの記録です。また、「戦時中の米軍レーダーの調査」は、1944年(昭和19年)11月21日に有明海に墜落したB-29より回収されたセンチ波レーダー、及び暗礁に乗り上げ放棄された米国潜水艦Darterより回収された水上警戒用レーダーに関わる調査記録で、当時の米国レーダーを知る誠に貴重な一次資料です。 現在これら2論文につきましては、仮称「横浜旧軍無線通信資料館」の編纂作業が遅れている為、出版に先行して当館のHPで公開を行っております。http://www.yokohamaradiomuseum.com/shimodawebsite/shimoda.html霜田光一先生履歴 1920年生まれ。理学博士。1943年東京帝国大学理学部物理学科卒業。1948年東京大学理学部助教授。1959年同教授、1960年理化学研究所主任研究員兼任。1981年東京大学名誉教授、慶応義塾大学理工学部教授(1986年迄)。 元レーザー学会会長、元日本物理教育学会会長。1974年東レ科学技術賞、1980年日本学士院賞、1990年勲二等瑞宝章、2008年文化功労者。研究分野はレーザー分光、量子エレクトロニクス、物理教育。