先日、エスミ電波研究所製の「RSA 1B」なるトランシーバーを「ヤフオク!」で入手した。この形のエスミ製品は1960年代初頭のカタログで承知をしていたが、実物を見るのは初めてで、誠に驚愕した。因みに、運用周波数は40.68MHzの市民バンドである。 事務局員はエスミ製品に強い思い入れがあるが、しかし、既にこの手の機材の収集は行って居らず、現在手元にエスミ製品はない。とは言え、その昔に入手を切望した製品を目の当たりにして、通り過ぎるわけにもいかず、結局落札する事になってしまった。 ところで、この時期のエスミ製品の殆どは、受信が三極管5676による超再生検波、送信は双三極管3A5(1/2)による水晶発振、3A5(1/2)の電力増幅方式で、低周波増幅兼変調部はトランジスタによるP.P.構成であった。 この回路構成はエスミ製品の標準型であり、周波数や収容ケースを変更する事により、各種の製品を作り出していた。このため、今般入手した「RSA 1B」も同一の構成と推察したが、内部を確認して誠にたまげた。 何と、本機の受信部はサブミニチュア管を使用した高周波増幅1段、周波数変換、中間周波増幅1段のスーパーヘテロダイン方式で、局部発振は水晶制御方式であり、これは当時のエスミ製品としては最高級品である。 一方、送信部はサブミニチュア三極管5676の発振、5676による電力増幅方式で、低周波部は汎用のトランジスタ構成であった。ところが、その低周波部の初段の石にはNECのオーバル型トランジスタST-300が使われており、誠に時代をよく表し、思わず笑ってしまった。エスミ電波研究所と事務局員 エスミは1950年代の後半より、各種の携帯式トランシーバーを発売した先駆的なメーカーであった。当時のエスミ製品は 一般のアマチュア無線家には購入が難しい高額品で、周囲の誰もが入手を切望していたが、所蔵する者は居なかった。事務局員が最初に手に入れたエスミ製品は27MHz帯のRT-1で、高校3年生の折、同学年の金持ちの息子より、二台対をただ同然で譲り受けた。 ところが、1968年にトリオがTR-1000を、また、他社が同類の製品を発売し始めると、エスミはマーケットより忽然と消えてしまった。 後年になり、事務局員は一時代を築いたエスミ電波研究所の創業者、江角べん蔵氏と、事業の顛末を知りたいと考えるようになった。しかし、残念ながら、 今日もなお、殆どのことは分かっていない。このため、「RSA 1B」の入手を機に、再度エスミ電波研究所に関わる調査を行いたいと考えている。