戦後米国のコリンズ社はスーパーヘテロダイン式受信機の第一局部発振回路を水晶による固定周波数発振方式とし、中間周波数を可変して受信同調を行う所謂「コリンズタイプ」式受信機を導入し、大成功を収めた。 この構成の受信機が何時実用化されたのかはハッキリしない。しかし、戦中帝国海軍はシングルスーパー構成ではあるが、本式の受信機「3式特受信機」を開発し、その概要については「コリンズタイプ式受信機の系譜-1」で紹介した。 本受信機に続き、今般はVHF帯を使用した陸軍航空部隊の編隊内通信用無線電話機「99式飛4号無線機(飛4号)」を紹介する。飛4号は陸軍の第四次制式制定作業の一環として、1939年(昭和14年)頃に開発されたが、受信機の構成はシングルコンバージョンではあるが「コリンズタイプ」である。 飛4号は送信機、受信機、電源、起動器、空中線整合器及び空中線装置等により構成され、電波形式は電話(A3)専用で、運用帯域は43,996〜50,000kHzであり、送信機はこの内任意の3周波数を実装し、受信機は6バンドで全帯域を受信する。受信機概観 飛4号を構成する受信機は高周波増幅1段、中間周波増幅1段、低周波増幅2段のシングルスーパーである。本機は5極(P)・3極(T)複合管Ut-6F7四本により構成され、運用周波数43,996〜50,000kHz を6バンドに分け、中間周波数の可変により、各1MHz幅で連続受信する。 フロントエンドはUt-6F7(P)による高周波増幅1段、Ut-6F7(P)による周波数混合(第一検波)で、局部発振はUt-6F7(T)による水晶発振方式である。高周波増幅段及び周波数混合段の同調回路は連動式の可変蓄電器により構成され、同調機構は同調周波数が表示されたバーニアダイアル方式である。 局部発振回路は独立した手動同調構成で、同調はバーニアダイアル方式である。回路はピアスGK構成で、7,666・7,833・8,000kHzの水晶片3個を装備し、切替により周波数混合用の第6高調波45,996・46,998・48,000kHzを得る。 周波数混合部は各局発周波数により、バンド1〜3(43,996〜47,000kHz)では上側ヘテロダインを、4〜6(46,996〜50,000kHz)では下側ヘテロダインを行い、3波の局部発振周波数で6バンドの可変中間周波信号を得る。 中間周波増幅部はUt-6F7(P)による1段増幅方式である。中間周波数は1~2MHzの可変方式で、このため、中間周波トランスの入力側及び出力側同調蓄電器は連動可変構成であり、同調ダイアル機構はバーニア式である。 受信周波数は前面に装置された選択式置換表により読み取るが、バンド1〜3と4〜6ではヘテロダイン方式が異なるため、置換表の周波数表示は逆となる。 第二検波はUt-6F7(P)による格子検波方式である。本機はAVC機能を備えており、第二検波出力をUt-6F7(T)の二極管接続により整流し、発生させたAVC制御電圧を高周波増幅管・中間周波増幅管の第一格子に加圧している。 低周波増幅回路はUT-6F7(T)二部による2段増幅構成で、各段は整合トランスにより結合され、音量調整は出力トランスの2次側に装置した可変抵抗器により行う。 なお、本受信機は第一局部発振周波数固定、中間周波数可変方式であるが、フロントエンドと中間周波増幅部の同調回路は独立した構成のため、受信同調は両回路の同調操作を並行して行う必要がある。99式飛4号無線機諸元用途: 編隊内通信用通信距離: 50km電波型式: 電話(A3)運用周波数: 43,996〜50,000kHz(任意の1波)送信機: 出力7W、トライテット水晶発振UY-807A、電力増幅UY-807A 、ハイシング変調UY-807A受信機: スーパーヘテロダイン方式(第一局部発振水晶制御・中間周波数可変方式)、高周波増幅1段、中間周波増幅1段、低周波増幅2段(Ut-6F7 x4)、AVC機能付中間周波数: 1-2MHz可変式電源(送受兼用): 直流回転式変圧器(入力24V)空中線: 1m(柱高0.8m)、地線は機体接地構成