先般米国の収集家より、当板で何度か掲示を行った「謎の小型無線装置」に就いての問い合わせがあった。内容は、この方が最近入手した本無線装置が、戦後米国のCIA用に製造された特殊無線機であるのかを知りたい、と云うもので、併せ素晴らしい構成機材の写真が送られてきた。 我が国に於いて、この無線装置を構成する小型送信機SMT-1、受信機RKS-253は1950年代の中頃に、米軍ジャンクを扱う山七商店によりアマチュア無線用に改造され販売された。また、当時は確認出来なかったが、その後此れ等は交流式電源により運用する構造である事が判明した。 さて、この無線装置は「U.S. Clandestine Radio Equipment」でスパイ用無線機として紹介され、米国ではその分類での扱いとなっている。 使用部品から、本装置は日本製であることに間違いは無く、事の真偽を確認するため、米国の収集家は当館(横浜旧軍無線通信資料館)に連絡を寄こした。しかし、残念ながら当館はその使用目的について、確たる情報を持っていない。 このため、先方には本機材の素性については不明と回答した。また、併せ、当時日本国内で販売された際の、関連資料を提供した。謎の小型無線装置補足 本装置は小型送信機SMT-1、受信機RKS-253及び交流式電源により構成されている。送信機、受信機は小型のハンドル付鉄製ケースに収められ、容積は共に210x135x165mmと非常に小型である。 構造から元来は軍仕様と考えられ、内部にはMFP塗装が施されている。使用部品や製造方法から、日本製で有る事に間違いはないが、添付の回路図に書かれた添え書きは英語である。 送信機SMT-1は水晶発振(三極管6J5)、電力増幅(ビーム管6L6)方式の電信専用機で、運用周波数が3〜7MHz、7〜15MHz(程度)の二機種が製造されたと考えられる。 受信機RKS-235はMT型電池管を使用したスーパーヘテロダイン方式で、構成は高周波増幅1段、中間周波増幅1段、低周波増幅2段、BF0付である。運用周波数は送信周波数に対応していたと考えられ、こちらも3〜7MHz、7〜15MH(程度)の二機材が製造されたはずである。送受信機は交流式電源で運用するが、入力一次電源は交流100〜200Vである。