横浜旧軍無線通信資料館掲示板


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    画像タイトル:img20241118090324.jpg -(251 KB)

    ドイツ対空監視用レーダー「Freya」送信機発振部 名前: 事務局員 [2024/11/18,09:03:24] No.9560
     先般、ドイツの蒐集家Dieter Beikirch氏より、大戦期に於けるドイツ海軍、空軍の代表的対空監視用レーダー「Freya」の送信機を構成した発振器の写真提供があった。本器の写真は誠に希少で、このため、参考資料として掲示を行うことにした。

     当該発振器は直熱式三極管TS41二本(P.P.構成)による自励発振方式で、同調回路はレッヘル線構成である。発振管の陽極電圧は8,000V、格子電圧は-2000Vで、変調管の出力パルスにより格子回路が制御され、尖頭出力20kWで発振する。

     Beikirch氏はドイツ空軍の機上用レーダーや電波探知機に関わる大きなコレクションを所蔵し、その中には、先年当館(横浜旧軍無線通信資料館)が入手した誘電体空中線素子を装備する機上用マイクロ波電波探知機、「FuG350」も含まれている。

     既に掲示を行ったが、最近当館はドイツ海軍の水上警戒レーダー「Seetakt(ゼータクト)」の送信機を構成した発振器を入手した。このため、資料として細部写真をBeikirch氏に提供したところ、その返礼としてか、氏が最近入手した「Freya」送信部・発振器の写真が送られてきた。

     当館が所蔵する「Freya」の資料は米軍のTMが中心で、残存機に関わる物は皆無である。今般Beikirch氏が入手された発振部は完品で程度もすこぶる良く、資料としては誠に貴重である。

    対空監視レーダーFreya(フライア)
     本機はGEMA社がドイツ海軍の依頼により1937年(昭和12年)に開発した地上設置型の対空早期警戒用レーダーで、標的の方位角及び距離の二諸元を測定した。フライアの本格的導入は1939年(16年)で、当初本機の測定は最大感度方式であったが、その後等感度方式に改良された。

     ドイツ空軍は早い時期に敵味方識別装置(IFF)FuG25aを導入したが、このためフライアにもIFF信号の測定機能が追加され、IFF用受信空中線は既設空中線装置の上部に設置された。機上のFug25aはフライアの送信波を受信すると、そのバルスに識別用の変調を行い156MHzで返送した。

      IFF機能の追加により、改修型のフライアは電子銃が二重構造のブラウン管(CRT)HR2-100-1.5を使用し、探索、測距、方位等感度測定用の反射パルスをCRTの上部に、IFFの返送パルスをその下に併せ表示した。

     フライアの公称探索距離は200kmで、大戦後期になるとその探索範囲の拡大が要望され、遠距離監視型として海軍は仰角測定機能を具えたWasserman(ワッサーマン)を、空軍はMammute(マムート)を導入したが、空中線を除く主装置は既設フライア装置の転用、または、一部機能を追加したものである。

     フライアと同時期に艦艇、沿岸警備用として375MHzを使用したゼータクトが開発された。本機は空中線や高周波部を除き、波形表示方式や測距装置の構成はフライアと同一で、初期型の測定は最大感度方式であった。

    Freya(等感度測定式)諸元
    用途: 対空早期警戒
    運用周波数: 125MHz
    繰返周波数: 500Hz
    パルス幅: 2μs
    尖頭出力: 20kW
    送信空中線: 半波長ダイポール垂直6列2段、金網式反射器付
    受信空中線: 半波長ダイポール垂直3列2段左右二組(等感度測定構成)、金網式反射器付
    送信機: 発振管TS41 x2(P.P.構成 )
    変調方式: パルス変調管RS391
    受信機: Wスーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段、第一中間周波増幅2段、第二中間周波増幅2段、低周波増幅1段
    中間周波数: 第一中間周波数15MHz、第二中間周波数7MHz、帯域幅900kHz
    測定方法: 等感度方式
    信号表示: Aスコープ方式
    有効測定距離: 150km
    測距精度: ±50m
    測角精度: ±0.2°
    設置場所: 海抜60m以上
    電源: 一次電源380V三相

    帝国海軍とFreya
     1941年(昭和16年)1月、帝国海軍は英国と熾烈な戦いを交えていたドイツに軍事視察団を派遣したが、団員であった伊藤庸二造兵中佐(当時)他数名は3月23日の夕刻、ロリアン軍港(フランス)近郊でドイツ海軍の陸上設置型レーダーを検分する機会を与えられた。

     伊藤中佐が検分したレーダーについては諸説が有るが、当時のドイツ海軍が装備し、外部への開示が許可できる機材は、既にその存在が知られた対空監視用のX装置(フライア)以外にはなく、また、検分時に伊藤中佐が描いたスケッチが明確にそれを示している。

     当時帝国陸海軍は英独他各国に駐在する武官等よりの情報を基に、レーダーの研究を始めていたが、肝心な電波形式が判然とせず、本格的開発には程遠い状況であった。しかし、ドイツ海軍の情報開示により、発射電波はパルス変調方式である事が判明し、また、送受信用空中線や送受信機、及び波形表示方式等も明確となり、この情報は電報により直ちに海軍本部に報告された。以降帝国陸海軍のレーダー開発は急速に進捗した。





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