この度、広島在住の無線技術研究家、藤田勝三殿より、リーダー電子の3215型標準信号発生器を御寄贈頂きました。
藤田殿の御高配、御協力に心より感謝申し上げます。
現在当館は旧軍受信機の性能測定試験を計画しており、その準備を進めています。しかし、所蔵する標準信号発生器の動作が不良で、このため、FBで「求む、標準信号発生器」の掲示を行った経緯があります。藤田殿の御寄贈により、漸く測定作業が進められる事となり、誠に幸いです。
改めて、藤田殿の御高配に心より感謝申し上げます。
先週、標記の真空管3本を「ヤフオク!」で入手した。当館(横浜旧軍無線通信資料館)は本送信管を複数本所蔵しており、特段入手の必要性も無かったが、然りとて無視をするのも偲びがたく、冷やかし程を応札した所、僅かな金額で事務局員に落ちた。
帝国陸海軍のレーダーに関わる送信管は希少性もあり、その昔はとんでもない価格で取引が行われていた。このため、今般の落札価格には誠に驚いた。しかし、入手したT-311の何れもが使用品で、ゲッターも白濁しており、このため、程度の不良が災いし、盛り上がりに欠けたものと考えられる。
ところで、T-311は東芝が大戦中に開発した超短波用の自然空冷式三極管で、海軍の可搬式対空警戒用レーダー「1号電波探信儀3型(13号電探)」や、陸軍の機上用警戒レーダー「タキ1号」の発振管として使用された。
特に13号電探は可搬式のため使い勝手が良く、また、高性能であったため、T-311も大量に生産され、戦後放出された在庫品は、高周波ミシンの発振管として大いに役立ち、産業の復興に貢献した。おそらく、入手管も状態から、これら工業用高周波ミシンに関係した物であったと推察される。
超短波発振管T-311諸元(資料出典 電子管の歴史)
用途: 極超短波発振管
製造元: 東芝
線條電圧/電流: 12V/6A
Gm: 3000μ℧
増幅率: 16
最大陽極電圧: 10000V
最高周波数: 200MHz
電極静電容量: Cpg(pF)
海軍13号電探補足
本レーダーは大戦中期に導入された陸上部隊用の、可搬式対空警戒用レーダーである。13号電探は前線への配備を考慮した小型、軽量機材で、設置、取扱が容易な為、陸上使用と併せ、装備の一部を変更し、航空母艦より潜水艦まで、殆ど総ての海軍艦艇にも装備された。このため、13号電探の生産台数は2,000台を越え、海軍で最も成功した対空警戒用レーダーとなった。
13号電探緒元
用途: 対空警戒
設置場所: 陸上・艦艇・潜水艦
有効距離: 編隊100km以上、単機50km以上
周波数: 150MHz帯
繰返周波数: 500Hz
パルス幅: 10μs
送信尖頭出力: 10kW
空中線: 半波長ダイポール水平2列4段、反射器付、送受兼用
送信機: 発振管T-311 x2(P.P.)
変調方式: パルス変調、変調管T-307
受信機: スーパーヘテロダイン方式(11球)、高周波2段(UN-954 x2)、混合(UN-954)、局発(UN-955)、中間周波5段(RH-2 x5)、検波(RH-2)、低周波増幅1段(RH-2)
中間周波数: 14.5MHz
帯域幅: ±100kHz
総合利得は120db以上
信号表示: Aスコープ方式
測定方法: 最大感度方式
測距精度:2-3km
測角精度: 10゜
電源: 単相110/220V交流電源
重量: 110kg
製造: 東芝・安立、1,000台
陸軍機上用探索レーダー「タキ1号」補足
タキ1号は陸軍が1943年(昭和18年)に開発した航空機搭載用探索レーダーの1号機で、タキ3号の開発が最終段階で中止となったため、陸軍航空隊唯一の実用索敵レーダーとして終戦まで使用された。
タキ1号2型、3型諸元
用途: 早期警戒
周波数: 200MHz
繰返周波数: 1,000Hz
パルス幅: 5μs
尖頭出力: 10kW
2型空中線装置: 機首5素子八木1基、胴体両側面半波長ダイポール水平2列2段、送受兼用
3型空中線装置: 機首5素子八木1基、両翼4素子八木各1基、送受兼用
送信機: 発振管T-311( P.P.)
変調方式: パルス変調、変調管UV-211
受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅3段(UN-954 x3)、混合(UN-954)、局部発振(UN-955)、中間周波増幅4段(RH-4 x4)、検波(RH-4)、低周波増幅(RH-4)
中間周波数: 9.5MHz
帯域幅: 500kHz
利得: 100db
測定方法: 最大感度方式
信号表示: Aスコープ方式
掃引幅: 0-100km
測定距離: 潜水艦15km、大型艦50km、艦隊100km(高度1,500m)
測距精度: ±2km
測角精度: ±5°
電源: 直流交流変換器(入力直流24V、出力3相100V、750VA)
総重量: 150kg
製造: 日本無線
先般、米国の収集家より、米国陸軍の鹵獲兵器調査機関であるEEIS(Enemy Equipment Intelligence Service) が作成した、帝国陸海軍無線機材に関わる報告書の提供を受け、この中に陸軍の「94式2号丁無線機」が含まれていた。
本機は機械化部隊の指揮官車用として開発されたが、資料が少なく、編纂作業を後回しにしていた経緯があり、誠に有りがたい資料提供であった。
日本無線史第9巻・陸軍編によると、「94式2号丁無線機」は試作機を含め6機が製造されたが、その後不整備(調達中止)になったとの事である。しかし、本機はビルマで英軍に鹵獲されている事等から、実際には相当数が整備され、配備されたと推察される。
ところで、「94式2号丁無線機」は指揮官車用のため、野戦機材には珍しく、電話主体で秘話装置を装備している。帝国陸海軍の秘話装置に関わる資料は少なく、このため、参考資料として、本無線機の秘話装置及び、所蔵する秘話式「特4号電話機」について、その概要及び資料を掲示した。
94式2号丁無線機秘話装置
本装置は受信機の上部に設置された簡単な単側波帯反転式で、回路はまさにSSBジェネレーターそのものである(掲示回路図参照)。搬送波発振、増幅は三極管UY-76で、平衡変調回路は亜酸化銅整流器4本で構成されている。
送話器よりの音声信号は約4,500KHzの搬送波により平衡変調され、発生する両側波帯の内、2,000-4,000KHzの下側波帯をローパスフィルターで取り出し、双三極管UZ-79で二段増幅を行う。この反転した下側波帯を秘話音声として使用し、復調は同一回路により行う。
対向と搬送周波数を一致させるため、秘話装置の前面には、発振回路を構成する手動可変式蓄電器が装置されている。
なお、本機材で秘話機能を使用する場合は、電話モードに於いて、秘話装置の選択スイッチを「通常」より「特殊」に転換する。
94式2号丁無線機諸元
用途: 乗用自動車装備(主用途電話通信)、秘話装置付
通信距離: 60km
送信機
運用周波数: 900-5,500kHz
電波形式: 電信(A1)、電話(A3)
出力: 25W(電信)、12W(電話)
装置構成: 水晶又は主発振UY-510B、電力増幅UV-203A、音声増幅UY-510B、陽極変調UX-250二本(P.P.構成)
空中線装置(送受兼用): 車体装備逆L型、線長5m
受信機
電波形式: 電信(A1)、電話(A3)
受信周波数: 140-15,000kHz
装置構成: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段(UZ-78)、周波数変換(Ut-6A7)、中間周波増幅1段(UZ-78)、中間周波増幅2段(UZ-78)、検波(Ut-6B7二極部)、低周波増幅(Ut-6B7五極部) 、BFO(UY-37)
電源: 直流回転式変圧器(入力12V、出力250V)送受信共用
秘話装置: 単側波帯反転式
電源装置: 直流回転式変圧器送信機高圧用(入力12V、出力500V)、同バイアス用(出力-200V)、同受信機用(出力250V)
1次電源: 12V70AH蓄電池3個、500W充電機
装備自動車: 93式6輪乗用車
陸軍「特4号電話機」
本電話機は軍上層部用で、秘話式であるが、磁石式、共電式交換機及び、ダイアルを付加し自動交換機にも接続が可能である。
特4号電話機は送話器よりの音声信号を、2,200kHzの低域濾波器を通し第1信号とする。また、同一信号を4,600kHzで平衡変調を行い、発生する下側波帯を2,400-4,250kHzの帯域濾波器で取り出し、この反転変調信号を第2信号とする。
発生させた2信号は、モーター駆動のスイッチにより約100msecで切替え、増幅の後秘話音声信号とする。受信は同一方法により秘話信号を再生するが、電話は双方向同時通話のため、秘話用の側波帯発生回路は94式2号丁無線機の秘話装置とは異なり、上下2系統となっている。
掲示資料補足
写真@は94式2号丁無線機を構成する送信機と受信機で、受信機の上部に秘話装置が装着されている。
写真Aは秘話装置の内部である。
資料Bは秘話装置の回路構成図である。
写真Cは秘話式「特4号電話機」である。
先般、「ヴィンテージ・昭和・レトロ・受信機・整流器一型・受信機翼板電流用」なる電源を、「ヤフオク!」で入手した。冷やかしで応札したところ、何と僅か3,900円で事務局員に落ち、誠に驚いた。
「整流器一型・受信機翼板(陽極)電源用」は相当残存機が有るのか、時折「ヤフオク!」で見かける。このため、必要とは考えていたが、食指が動かず、今日まで入手することは無かった。しかし、期せずして収集が完了し、誠に幸いである。
本電源は海軍の代表的な艦艇用受信機「92式特受信機」を構成する交流式電源で、陸上局等で使用する。入力は90-110V/50-60Hzで、出力は直流250Vであり、整流は双二極管5Z3による両波整流である。
とは言え、92式特受信機を本電源で運用する場合は、併せ、線條用電源として、別途直流又は交流6Vを用意する必要がある。
「ヤフオク!」に掲載された写真の当該電源は酷い汚れ様で、このため、入手希望者は殆ど居なかったと考えられる。しかし、実物は清掃をしてみれば、内部に錆は残るが、欠品も無い良品であった。また、製造が昭和16年(1941年)の事もあり、構成部品の品質も良い。
92式特受信機補足
1926年に元号が大正より昭和に改まり暫くすると、艦隊通信は従来の長波帯に代え、小電力で遠達が可能な短波帯での運用が盛んになった。しかし、この時期艦隊が装備した主要受信機は、何れもが高周波増幅部に中和を施したニュートロダイン方式の、ストレート式であった。
一方、潜水艦隊に於いても短波帯への移行が進んでいたが、水上艦艇と比べ驚くほど狭小な電信室に、長波、短波用送受信機を各機複数台設置するのには限界があり、長波と短波帯が兼用可能な特別構造の送受信機の開発が強く要請された。
潜水艦隊の要望に応え、1931年(昭和6年)にYT式特3号送信機(長波1kW・短波500W)及び5号送信機(長波100W・短波100W)が明昭電機(後東洋通信機)により開発され、その翌年に92式特受信機が導入された。「特」とは長波、短波帯を兼用する特別型を表している。
この92式特受信機は、ストレート式長波受信部及び短波帯用コンバーター部により構成され、長波部は高周波増幅2段、再生(オートダイン)検波、低周波増幅1段構成で、コンバーター部を付加すると、高周波増幅2段、周波数変換、中間周波増幅2段、再生(オートダイン)検波、低周波増幅1段のスーパーヘテロダイン式受信機として動作する。
本機の同調コイルは差替式で、長中波帯20-1,500kHzを5バンドで、短波帯1,300-20,000kHzを5バンドで受信する。短波帯受信時、長波部は中間周波増幅部として動作するため、運用周波数帯に応じ、指定中間周波数に設定する。また、同調操作は短波帯用同調器により行う。
92式特受信機は導入以来、動作の安定を確保するのに時間を要し、幾多の改修が施されたが、1935年(昭和10年)の後半になり漸く完成の域に近づいた。
本受信機は潜水艦隊への配備を目的として開発されたが、改良型(3型以降)は使い勝手が良く、また、小型である事から海軍各部で重用され、艦隊の主要受信機として大戦終了まで使用された。
92式特受信機改4型諸元
用途: 艦艇用
長波受信周波数: 20-1,500kHz(コイル差替式5バンド)
短波受信周波数: 1,300-20,000KHz(コイル差替式5バンド)
長波帯受信構成: ストレート方式、高周波増幅2段(UZ-78 x2)、再生(オートダイン)検波(UZ-77)、低周波増幅1段(UY-238A)
短波帯受信構成: 長波部に周波数変換部付加のスーパーヘテロダイン方式、高周波増幅2段(UZ-78 x2)、周波数変換(Ut-6A7)、中間周波増幅2段、オートダイン検波、低周波増幅1段
電源: 直流100/220V、直流/交流6V
空中線装置: 艦艇装備固定式
先般大量の無線機器を当館(横浜旧軍無線通信資料館)の技術調査員である安齊穗積君宅に運搬したが、この折り、修復目的で陸軍航空部隊の機上用無線機「99式飛1号無線機(ム51)3型」受信機、「99式飛3号無線機」受信機及び、陸軍「車輌無線機甲」を構成する受信機を併せ持ち込んだ。
99式飛1号は陸軍航空部隊の大型機用機材で、飛3号は単座戦闘機用無線機である。また、車輌無線機甲は陸軍通信隊の車輌用無線機であるが、その構成は99式飛1号に相似している。
この内、現在安齊君によりム51三型・受信機の修復が進められているが、同調ダイアル部修復のためダイアル盤を取り外したところ、内側にウオームギァ機構のバックラッシュ防止のため、ゼンマイ構造のテンション用スプリングが装置されていた。
事務局員はこれまでに99式飛を構成する受信機のダイアル盤を外した事が無く、連絡を受け誠に驚いた。急ぎ既に半分が分解された99式飛3号・受信機のダイアル盤を外し点検したところ、本機にも同様のゼンマイによるテンション機構が装置されていた。
99式飛型無線機の導入は昭和14年(1939年)頃から始まったが、この時期既に陸軍機材には、ウオームギァ機構にウオームホイール2枚を使用し、この2枚にスプリングにより互いに逆方向のテンションを与え、バックラッシュを防止する方式が導入されていた。
とは言え、これらの同調機構は必ずしも完全では無く、このため、飛1号・受信機のウオームギャ機構には、ゼンマイによりテンションを加える方式が採用されたとも考えられる。このゼンマイは、蓄電器を同調周波数の高い方向に回転させると緩み、下げると巻き上げられる構造である。
99式飛機材は1号-3号が外観上は同一同調構成で、このため、未確認の飛2号無線機・受信機も同様に、ゼンマイ式テンション機構を装備していると考えられる。
なお、安齊君によるム51三型・受信機の修復は順調で、既に不良マイカ蓄電器の交換により装置は動作状態に復旧し、現在はトラッキング調整待ちである。
「99式飛1号無線機」補足
本機は昭和14年より暫時実施された第4次制式制定作業に於いて兵器化された、陸軍大型航空機用の遠距離通信機材である。送信機、受信機は非常に小型に造られており、容積は同一で16x24x18cm、重量は送信機が7.5kg、受信機が6kgである。
本無線機には原型及び改良型の複数種が確認されているが、運用周波数を除き構成回路に大きな違いはない。大戦末期になり陸軍航空部隊用機材は名称が変更され、本機は「ム51」表記となった。
99式飛1号無線機2型を構成する受信機は、高周波増幅2段、中間周波増幅2段、低周波増幅2段のスーパーヘテロダイン方式で、唸周波発振(BFO)、中間周波A2変調及びAGC機能を具え、構成真空管は5極(P)・3極(T)複合管Ut-6F7六本である。対応周波数は2,500-10,000KHzで、この周波数帯を差替え式線輪2本で受信する。
99式飛1号無線機諸元
用途: 遠距離航空機
通信距離: 1,000km
運用周波数: 1型、送信2,500-15,000kHz、受信2,500-15,000kHz
2型・3型、送信2,500-10,000kHz、受信2,500-10,000kHz
電波型式: A1(電信)、A2(変調電信),A3(電話)
送信機: 出力(A1)40W、(A2・A3)10W、水晶及び主発振輻射UY-807A x2並列使用、第二格子変調UY-807A
受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅2段、中間周波増幅2段、低周波増幅2段、AGC機能付(Ut-6F7 x6)
中間周波数: 450kHz
送信機電源: 入力24V直流回転式変圧器、出力700V
受機電源: 入力24V直流回転式変圧器、出力270V、低圧(線條用・送受信機兼用)8V4.7A
空中線装置: 垂下式、又は逆L型固定式、柱高0.8m、地線は機体接地構成
当館は現在旧軍無線機材の編纂に関わる関連資料として、大戦期に於ける米軍の携帯式無線電話機についての纏めを行っている。対象機材は陸軍通信隊のBC-222/SCR-194・195、BC-611/SCR-563-A、BC-1000/SCR-300及び海軍のTBYである。
先般、これらの内、最後に残った海軍のVHF簡易機材「TBY」について纏めを完了し、資料に添付する写真の撮影を行った。しかし、本体を筐体より取り出したところ、なんと、送信部の発振同調コイル4本(4バンド)の内、装備されていたのは50MHz帯をカバーする3番コイル一本のみで、有ろう事か他の3本は外されており、驚愕した。
このTBYに就いては、入手に関わる記憶があまり無い。TBYは簡易無線電話装置ながらよく出来た機材で、過去に装置完全一式を二度ほど所蔵した事があった。しかし、時期は資料館開設以前で、このため、特段の考慮無しに手放した経緯がある。
その後編纂作業の関連で再度の入手が必要となり、「ヤフオク!」で本機を落札した事は覚えている。出品時に掲載された写真で状態は把握しており、入手時に細部を確認する事も無く、長い間放置していた。
送信部の同調コイルは受信部と同一のターレット構造で、上蓋を開け内部を見ればその状態を確認することが出来る。しかし、バンド3のコイルを上部より見える位置に設定して写真を撮れば、他3本のコイルは確認する事は出来ない。ただし、落札は小生の責任に於いて行っており、文句を付けられる事柄でも無い。之が古物買いである。
とは言え、全く予期せぬ出来事で驚きは大きく、久しぶりに泣いた。
米国海軍簡易無線電話機「TBY」補足
TBYは1930年代の後半に開発された米国海軍のVHF携帯無線電話機で、陸戦隊や艦隊等海軍の各部署で広義に使用された。本機は送信が自励発振・直接輻射方式で、受信が超再生検波方式の簡易無線機材であり、運用周波数は28-80MHzである。TBYは兵一名が背負い移動しての運用が可能であるが、通常は半固定式で運用する事が多かった。本機は大戦終了まで使用されたため、開発以降多くの改良が施され、各型が生産されたが、基本回路構成に然したる違いは無い。
TBY-8緒元
用途: 海軍陸戦隊用
通信距離: 約1.5km
電波形式: 変調電信(A2)、電話(A3)
送信出力: 0.5W
運用周波数: 28-80MHz(4バンド)
送信構成: 発振「958A(P.P.構成)」、陽極変調(ハイシング変調)「1E7G(五極部.P.P構成)」、音声増幅・低周波発振「30」
受信構成: 高周波増幅「959」、超再生検波「958A」、低周波増幅1段「30」、低周波増幅2段「1E7G(五極部.P.P構成)」、較正用水晶発振「30」
電源: CNC-19018B型乾電池(156V、3V、1.5V、-7.5V)
空中線: ロッド型、2.7m10段繋
総重量: 約13Kg
2023年が開け、再び際限の無い資料収集の日々が始まった。当館(横浜旧軍無線通信資料館)は各位のご協力を頂き、之までに帝国陸海軍の無線機材や電波兵器に関わる多くの機器を収集してきたが、しかし、未だその片鱗すら確認出来ていない機材も数多くある。その一つが帝国海軍の大型航空機用方向探知機、「T式空4号無線帰投方位測定機(テ式空4号)」である。
本方向探知機は独逸テレフンケン社製の機上用方向探知機EZ-2(Peil-G V)を海軍が輸入し、制式化したもので、96式や一式陸上攻撃機等に搭載された。この方向探知機はその後、国際情勢の緊張により入手が困難となり、1940年(昭和15年)頃に急遽国産化され、「零式空4号無線帰投方位測定機」として制式化された。
原型であるPeil-G Vは民間航空機用の方向探知機として、我が国を含む各国の大型航空機で使用され、世界一周飛行を行ったニッポン号も本機を装備していた。
当館は之までに、国内に於いてテ式空4号や零式空4号を発見、入手する事ができず、このため、最近は原型であるEZ-2(Peil-G V)を入手すべく、欧州の収集家に協力を依頼してきた。しかし、大戦中ドイツ空軍は旧式の航空機材を鋳つぶし、新兵器の製造に流用したため、彼の地にあっても本機は希少品で、現在まで、入手に繫がる情報は皆無である。
この調査に関連し発見したのが、先般掲示のドイツ人コレクターDieter Beikircht氏が所蔵するPeil-G X(EZ-2)であった。本収集物はあまりにも完成度が高く、小生は誠驚愕した。
https://www.youtube.com/watch?v=NSX7EyRG3k8
ところで、大戦期、帝国陸軍航空隊もEZ-2を参考に、「飛1号方向探知機」を開発し、大型機に配備した。本機については受信機の存在を二台ほど確認したが、残念ながら、当館が入手出来る状況には無い。
陸軍は飛1号方向探知機に続き、中型機用の「飛2号方向探知機」を開発するが、本機については比較的残存機があり、幸い当館も枠型空中線を除く主要構成機材を所蔵している。
以上の如く、現在の所、テ式空4号、零式空4号及びEZ-2(Peil-G V)の入手に関わる手立ては無いが、年頭に際し、本年はこれら機材を是非とも収集したく、強く決意、期待する次第である。
海軍「T(テ)式空4号無線帰投方位測定機」諸元
用途: 大型航空機
測定項目: 一般受信(単一方位確定)、手動受聴式、航路計式、A/N復調式
運用周波数: 長波165-400KHz、中波400-1,000KHz
電波形式: A1(非変調波)、A2・A3(変調波)
受信構成: ストレート方式、空中線合成・位相反転回路、高周波増幅3段、検波、低周波増1段、唸発振(BFO)、AGC機能付、構成管五極管NF-2 x6
電源装置: 直流回転式変圧器
空中線装置: 方位測定用回転式枠型空中線(ループアンテナ)、補助垂直空中線(センスアンテナ)/兼通信用固定空中線、地線機体接地
T式空4号補足
本方向探知機は受信機本体、ループアンテナ及び回転器、通信用空中線と兼用のセンスアンテナ、管制器、電源装置他により構成され、機上に於いて、一般受信、手動受聴式方位測定及び、航路計式、A/N復調式による帰投方位測定(ホーミング)を行う。
本方位測定機は受信同調や測定に関わる操作の一切を、ワイヤーケーブルを介し外部に設置した管制器により遠隔にて行う。また、同様に、方位測定に必要なループアンテナの回転操作も、管制器と同一の場所に設置した枠型空中線回転器により行う。
新年あけましておめでとうございます。
本年が皆様にとり幸多き年となりますよう、心より祈念申し上げます。
2023年 元旦
横浜旧軍無線通信資料館
土居 隆
この度、南足柄市在住のアマチュア無線家(JA1HVL)、茅沼完治殿より、以下の品々を当館に御寄贈頂きました。茅沼殿の御高配に、心より感謝申し上げます。
なお、茅沼殿は養蜂工房「ミツバチの大地」の運営主として知られています。
☆National HRO-5(構成コイル、ラックタイプSP付)
☆National HRO-50(構成コイル付)
☆Hammarlund Pro-310
☆Collins 75A-1
☆Collins R-388
☆Collins R-648(二台)
☆Drake 2B
☆スター SR-550
☆RCA Radiola-18(古典ラジオ)
上記の如く、御寄贈頂きました何れもが、無線機器収集家にとっては垂涎の品々で、誠に驚き、感激致しました。これらの品々は当館の所蔵資料として、研究、展示等広義に使用させて頂きます。
今般、標記レーダーを構成した2次電源装置を入手した。当館(横浜旧軍無線通信資料館)は之までタキ1号の構成機材を確認した事はなく、この度の入手は誠の驚きである。
先年当館は陸軍の機上用接敵レーダー「タキ2号」の送信機各種及び、機上索敵レーダー「タキ3号」の2次電源装置二台を入手した。今般の入手により、陸軍が開発した主要機上レーダー三種の構成機材を所蔵する事となり、誠に幸いである。
タキ1号は陸軍が1943年(昭和18年)に開発した航空機搭載用探索レーダーの1号機で、タキ3号の開発が最終段階で中止となったため、陸軍航空隊唯一の実用索敵レーダーとして終戦まで使用された。
タキ1号は1型(原型)より4型迄が開発されたが、原型は実験機的側面が強く、実用されたのは2型、3型であり、大戦末期に導入された4型により完成の域に達した。今般入手した電源装置は、米軍の写真資料より判断して4型である。本電源装置は先年入手したタキ3号の電源と比べ非常に大きく、容積は40x26x71cm、重量は約30kgである。
電源装置
タキ1号の1次電源は直流回転式交流発電機(入力24V)により構成され、出力は3相100V(750VA)、400Hzである。2次電源は交流式で、送信機、変調機、受信機/波形指示機他用により構成さている。高圧出力は送信機用が10,000V、パルス変調機用が3,000V、波形指示機ブラウン管用が約1,000V、受信機/波形指示装置他用が200Vで、各回路の整流は何れもがセレン整流器である。
陸軍機上用レーダーの開発
陸軍航空本部に於ける航空機搭載用電波警戒機(索敵レーダー)の研究開発は1942年(昭和17年)の初頭より始められた。当時既に海軍航空技術廠(空技廠)では同一目的の航空機用電波探信儀(H-6レーダー)の開発が最終段階にあったが、当時陸海軍相互の技術交換は低調で、タキ1号の研究は真空管の選定より始める様な状況であった。
同年4月、波長1.5m(200MHz)を使用した尖頭出力10kWの試作機が完成し、輸送機に装備して運用実験が開始された。当初本電波警戒機の索敵対象は航空機であり、標的にはフイリッピンで鹵獲したB-17爆撃機が使用された。しかし結果は不良で、目視できる同爆撃機の反射波さえ得ることが出来なかった(注)。
以後実験は継続されたが航空機の探知には成功せず、結局艦艇等を対象とした索敵レーダーとしての研究、開発が進められる事になった。
1943年(昭和18年)の初頭に量産型の原型が完成し、陸軍初の機上用レーダーは電波警戒機「タキ1号」として制式化された。以後実戦配備に関わる各種の実験が繰り返され、同年の暮れには100式重爆撃機への装備が始まり、1944年(昭和19年)3月からは4式重爆「飛龍」への配備も進んだ。
.
タキ1号2型、3型諸元
用途: 早期警戒
周波数: 200MHz
繰返周波数: 1,000Hz
パルス幅: 5μs
尖頭出力: 10kW
2型空中線装置: 機首5素子八木1基、胴体両側面半波長ダイポール水平2列2段、送受兼用
3型空中線装置: 機首5素子八木1基、両翼4素子八木各1基、送受兼用
送信機: 発振管T-311( P.P.)
変調方式: パルス変調、変調管UV-211
受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅3段(UN-954 x3)、混合(UN-954)、局部発振(UN-955)、中間周波増幅4段(RH-4 x4)、検波(RH-4)、低周波増幅(RH-4)
中間周波数: 9.5MHz
帯域幅: 500KHz
利得: 100db
測定方法: 最大感度方式
信号表示: Aスコープ方式
掃引幅: 0-100km
測定距離: 潜水艦15km、大型艦50km、艦隊100km(高度1,500m)
測距精度: ±2km
測角精度: ±5°
電源: 直流交流変換器(入力直流24V、出力3相100V、750VA)
総重量: 150kg
製造: 日本無線
.
タキ1号4型
本機は大戦末期に開発されたタキ1号の最終型で、運用周波数を200MHz帯より150MHz帯に下げ動作の安定を図った。構造は2型と殆ど同一であるが、構成真空管が大幅に変更された。また、重量も軽減され、中型機への搭載が可能となった。
.
タキ1号4型諸元
用途: 早期警戒
周波数: 150MHz
繰返周波数: 1,000Hz
パルス幅: 5μs
尖頭出力: 10kW
空中線: 機首4素子八木1基、胴体両側面半波長ダイポール水平2列2段、送受兼用
送信機: 発振管T-319( P.P.)
変調方式: パルス変調、変調管T-307
受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅2段(UN-954 x2)、混合(UN-954)、局部発振(UN-955)、中間周波増幅5段(ソラ x4)、検波(ソラ)、低周波増幅2段(ソラ x3、最終段P.P.構成)
中間周波数: 10MHz
帯域幅: 500kHz
利得: 100db
測定方法: 最大感度方式
信号表示: Aスコープ方式
測定距離: 潜水艦15km、大型艦50km、艦隊100km(高度1500m)
測距精度: ±2km
測角精度: ±5°
1次電源装置: 直流回転式交流発電機、入力直流24V、出力3相100V/400Hz、750VA
2次電源装置: 高圧10,000V、3,000V、200V、低圧24V(1次入力電源共用)
総重量: 110kg
タキ1号による夜間雷撃
陸軍は1944年(昭和19年)初頭に海軍と締結した「陸軍航空部隊雷撃訓練等に関する覚書」に基づき、陸軍飛行第7戦隊、第98戦隊を海軍の指揮下に編入し、海軍の暗号書を用いた通信及び、洋上航法を修得させた。
これら部隊は海軍の指揮下、四式重爆「飛龍」に雷装し、台湾航空戦、沖縄航空戦、本土防衛戦を戦った。夜間雷撃戦は探索レーダー「タキ1号」を搭載した誘導機が索敵を行い、敵艦隊上空に照明弾を投下し、浮かび上がるシルエットに向け、電波高度計「タキ13号」を頼りに超低空を飛行する僚機が雷撃を敢行した。本作戦は参加機に洋上航法を支援する海軍の偵察員や操縦員も同乗するなどし、陸海軍が一体となった共同作戦であった。
掲示資料補足
組写真@、掲示は今般入手したタキ1号の電源装置である。
写真Aは電源装置の内部であるが、かなり空きスペースがある。高圧部10,000Vのコロナ放電を防ぐ手立てとも考えられる。
写真Bは米軍資料に掲示されたタキ1号の構成機材である。写真からして、送信機も入手電源と同等の大きさであったと考えられる。機上用としては相当な容積である。
写真C、掲示は先に入手したタキ2号、3号の構成機材である。
(注) 近距離で航空機の探知が困難であった原因は、地表からの反射波により、航空機よりの反射波が覆い隠されたためと考えられる。特に海上で顕著な「うねって変動する反射波」は「海蛇現象」と呼ばれた。
このため、各国で開発された接敵レーダーの探索、測定距離は、地表よりの反射波が受信されない自機の飛行高度範囲内であった。つまり、高度5,000mで飛行する索敵機の測定範囲は5km以内で、それ以上は地表の反射波に覆われる。
一方、遠距離にあっては、地表よりの反射波は暫時減少し影響は無くなるが、メートル波帯機上レーダーは空中線系の利得不足、低送信出力、解像度不良等のため、大編隊でも無い限りその探知は困難であった。
今般、42号電探の高角照準器(仰角測定器)を入手した。42号電探は海軍のメートル波帯の陸上設置型対空射撃管制レーダーで、標的の距離と併せ、方位角、高角を等感度方式により測定した。今日、帝国海軍の射撃管制レーダーに関わる構成機材を入手出来るなどとは、誠に信じられない事である。
42号電探
海軍技術研究所は緒戦に米国陸軍の射撃管制レーダーSCR-268を模倣し、対空射撃電探の1号機となる4号電波探信儀1型(41号電探)を開発した。メートル波帯機材については41号の開発を経て、42号電探により完成の域に達した。42号電探は探照灯管制用43号電探と共に抜群の成績を収め、以降本周波数帯に於ける対空射撃管制レーダーの開発は行われなかった。
入手照準器
当館(横浜旧軍無線通信資料館)は43号電探の波形選択器他を所蔵するも、42号電探については送信機の発振管TA-1504を所蔵するのみであり、今般の入手は誠に幸いであった。
当該照準器は回路構成部品に欠品は無く、原状を維持していた。しかし、波形表示用ブラウン管(CRT)BG-75A及び、信号増幅管PH-1が欠品していた。また、CRTの前面留金具及び、輝度調整器のツマミが欠落していた。
簡単な清掃を済ませ、早速所蔵のBG-75A及び構成管を装着した。欠品の輝度調整ツマミは、近日レジンにより製作を行う予定である。
なお、本機の容積は18x18x45cmで、重量は約10kgである。
照準器補足
42号電探に於ける方位角、仰角の測定は、等感度測定方式により行う。本目的のため、上・下(仰角)、左・右(方位角)測定用受信空中線が4基を装置され、対向する空中線2基は1/40秒毎に切替られる。
高角照準器では、上・下空中線で受信された標的の反射波が、CRTの中央に間隔を開け、左右二本の縦線として表示される。仰角測定担当は制動ハンドルにより空中線の仰角を可変し、表示2波形の振幅が等しくなる「等感度」位置を求め、追尾を行う。
表示2波形の振幅が一致した位置で空中線は標的に正対し、空中線の傾きにより標的の仰角を精密に測定する事が出来る。また、方位角の測定原理も同一である。参考資料として等感度測定方式を概観した「方位角等感度測定概念図」を掲示した。
42号電探緒元
用途: 陸上用射撃管制
設置場所: 防空砲台
有効距離: 編隊40km、単機20km
周波数: 200MHz帯
繰返周波数:1,000 Hz
パルス幅: 3μs
送信尖頭出力: 13kW
送信空中線: 複合八木型2x4
受信空中線: 複合八木型2x4
送信機: 発振管TA-1504 /LD-209(P.P.) x2
変調方式: パルス変調、変調管TB-508C x2(並列)
受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅2段(UN-954x2)、周波数混合(UN-954)、局部発振(UN-955)、中間周波増幅6段(RH-8 x6)、検波(RH-8)、低周波増幅2段(RH-8、PH-1)
信号表示: Aスコープ方式
測定方法: 等感度方式
距離精度: 50m
方位角精度: ±1゜
仰角精度:± 1゜
電源: 3相200V交流電源
重量: 5,000kg
製造: 住友・日本音響・日立・日蓄、約60台
掲示資料補足
組写真@は今般入手した42号電探の高角照準器である。
写真Aは42号電探を背後より撮った写真である。
資料Bは等感度測定方式の説明概念図である。
写真Cは清掃後BG-75Aを装備した高角照準器である。輝度調整用ツマミ及び、CRTの前面覆いが欠落している。
なお、42号電探の装置概念図、入手照準器の細部写真他について以下のFacebookに掲示を行った。
https://www.facebook.com/groups/1687374128228449
先日、期せずして、米国National製の初期型短波受信機SW-3、SW-4、SW-5を入手した。これらは同社のHRO受信機以前の製品で、何れもが再生・オートダイン検波のストレート式である。
入手受信機の程度は非常に良好であるが、これらの内、SW-5はコイルが欠品しており、撮影は構造が同じSW-3のコイルを装着して行った。
なお、受信機の型式「SW」は短波機材を指し、続く数字は構成真空管の数を表している。このため、型式は各機の導入順位とは関係がない。
SW型受信機の系譜
1927年頃よりNational社は一連の短波受信機SW-2、3、4、5他を暫時発売したが、当初2球式、3球式は単にThrill Boxと呼ばれ、4球式がSW-4 Thrill Boxと標記された。
各機は高周波増幅付の再生・オートダイン検波方式で、何れの受信機も同調コイルはプラグイン構造の差替式である。同調機構はSW-2〜4が変則のバーニャ構造で、SW-5は糸掛式であり、各機の周波数は置換表により読み取る。
各機概観
SW-2
Nationalが最初に発売したのは2球式のSW-2である。本機は高周波増幅、再生・オートダイン検波構成で、2.5-20MHzを4バンドで受信した。何故か低周波増幅回路は具えて居らず、出力は検波管の陽極回路に負荷抵抗として受話器を直列に接続し、取り出した。
高周波増幅段は直熱式四極管222で構成されているが、入力回路は高周波チーク(RFC)で代用した非同調方式であり、その主要用途は検波回路が発する輻射波の抑圧である。検波回路は直熱式三極管112Aで構成され、再生帰還量の調整は陽極電圧可変方式である。
SW-4
次に販売されたのが、4球式のSW-4である。本機は高周波増幅、再生・オートダイン検波、低周波増幅2段構成で、1-16.6MHzを6バンドで受信し、構成管は直熱式である。
高周波増幅段はSW-2と同様に四極管222で構成され、入力回路も同一のRFCによる非同調方式である。検波回路は三極管200Aで構成され、再生帰還量の調整は陽極帰還コイルに付加されたQダンプ用抵抗器を可変して行う。同調蓄電器は変則の二連構成で、低周波数帯域では付加されたスイッチにより、蓄電器の容量を増加させ使用する。
低周波増幅回路は1段部が三極管240で、2段部は三極管171Aにより構成され、出力側に変成器付きのスピーカーを接続する。
SW-5
1929年に五球式のSW-5が発売された。本機は高周波増幅、再生・オートダイン検波、低周波増幅2段構成で、0.6-33MHzを9バンドで受信する。また、アマチュア無線家用に、3.5、7、14MHzのハムバンド拡大用コイルが別売された。
本機の高周波増幅段は傍熱式四極管235で構成され、漸く回路はL・Cによる同調構成となった。検波回路も235で構成され、再生帰還の調整は、検波管の遮蔽格子電圧可変方式である。各段の同調蓄電器は二連構成で、また、空中線入力回路には補正蓄電器が装置されている。
低周波増幅回路は一段部が傍熱式三極管227で構成され、2段部出力回路は直熱式三極管45二本によるP.P.構成である。受話器は一段部の出力側に接続する。
SW-3
本機はパンナムの、南米航路を飛行する飛行艇への搭載を考慮し設計された通信型受信機で、導入は1931年である。用途を考慮し、同調コイルには従来の湿気に弱いベークライト製ボビンに替え、マイカ粉末を高電熱で処理したQの高いモールド製ボビンが採用された。
SW-3は高周波増幅、再生・オートダイン検波、低周波増幅1段構成で、差替え式コイルにより0.15-33MHzを10バンド受信する。併せ、SW-5と同様にハムバンド拡大用コイルが販売された。
本機の原型は線條電圧2.5Vの傍熱管により構成された。高周波増幅、検波回路は四極管35により構成され、検波段の再生帰還量の調整は、検波管の遮蔽格子電圧可変方式である。各段の同調蓄電器は二連構成で、また、空中線入力回路には補正蓄電器が装置されている。
低周波増幅部は三極管27により構成され、低周波出力は陽極回路に負荷抵抗として受話器を直列に接続して取り出す方式である。
1935年3月にHROの原型が販売されたが、同時期、改良型のSW-3 U型が導入された。本機は線條電圧6.3Vの傍熱管により構成され、アマチュア無線家の間で大好評を博した。以降、構成や、構成管が異なるSW-3各型が導入され、1940年頃まで生産が続けられた。
掲示写真補足
組写真@、掲示は今般入手した受信機3台である。左側の下はSW-4、上部に載っているのがSW-3のコイルセットである。右側下部はSW-5、上がSW-3である。
写真AはSW-4の内部である。
写真BはSW-5の内部で、同調機構がSW-4とは異なる。
写真CはSW-3と構成コイルである。
昭和19年4月は、戦争末期で敵の我が本土上陸が必至、これを迎撃すべき陣地構築が始まろうとしていた。
その最先端の砲座等各部署を指揮する手段は 有線電話が構築に合わせて敷設されていたが、
戦闘が開始されれば爆撃、砲撃により埋設をしてあっても電線は破壊される不安がある。
無線によって指揮通達を二重系とし、確実化する。『全波受信機』はそのためのものと考える。
さらに進めて高声機能を付加し、即時一斉伝達を可能にした。
緊急策として作られた受信機だ。そうでなければ、敵の謀略放送の受信も出来る『全波受信機』の配置は不適当!
当時私の居た相模湾は敵の本土上陸作戦が必須想定の場所で、熱海と藤沢で砲台連絡用トンネル堀に数回動員された。
既に有線電話が開設されていて責任者が開始、休憩、終了、分隊間の交代等の指令を受けてメガホンで伝達していた。
この電話回線は陣地完成後も利用するが、確実とは言えない!
(余談)掘削成績が良くて所属分隊は、少佐の隊長から褒められた。
『全波受信機』は、放送受信機である。通信兵でなく、一般兵にも操作できる『ラジオ』だ。
敵による電波攪乱を想定して全波とした!
指令側は放送機で、数ワット〜数十ワットのA3送信機を別途製造したが規格化するほどの数ではかっただろう?
旧来のA1送信機を予備的に使用を考慮して、受信機にVFOが付加したものか?
>> |
全波受信機を推測する
名前: 事務局員
[2022/11/09,10:34:14] No.9484
安原様 |