-(204 KB)昨今は異常気象とのことで、各地で高温や豪雨による被害が頻発し、誠に心苦しい。
ところで、8月28日は「気象予報士の日」とのことで、先般、これに関連して、日本ニュースが1946年(昭和21年)に製作した気象庁の高層観測の映像を、NHKが流していた。
ちなみに、「気象予報士の日」は、1994年(平成6年)のこの日、第1回の気象予報士国家試験が行われたことに由来するそうである。
さて、この映像に、帝国陸軍が使用していた高層観測用受信機「無線測定機・RS101型」が映し出され、誠にたまげた。当館は本受信機を所蔵しており、小生は本機を陸軍専用の受信機と考えていたが、実は汎用受信機であり、当時、気象庁でも使用されていたようである。
この受信機は、高周波増幅2段(初段は非同調)、オートダイン検波、低周波増幅2段構成で、運用周波数は0.035〜15MHz程、6組の差し替え式コイルにより、この周波数帯域を受信する。
本機は一般的な電池管構成のストレート式受信機で、特段珍しいものではないが、フリクション回転式の同調ダイヤルに、ラジオゾンデの周波数変化を読み取るバーニヤ機構が付加されている。
高層気象観測
「高層気象観測」とは、ラジオゾンデによる地上から高度約30kmまでの大気観測のことで、現在は世界各地で毎日2回、世界時の00時と12時(日本標準時では09時と21時)に行われている。我が国では、掲示図のように、16か所の観測点と南極の昭和基地で、同時刻にラジオゾンデによる観測を行っている。
この観測により、観測地域の大気の構造を3次元的に知ることができ、得られたデータは、天気予報の数値モデルの初期値や高層天気図の作成に用いられる。
ラジオゾンデの観測
ゾンデは、気圧・温度・湿度などの観測データを、発振周波数の変化に置き換えて送信する。このため、受信側では、高度に対応する周波数の変化を読み取ることにより、観測値を知ることができる。
高度を知らせるため、ゾンデの各発振器は高度断続器によって送信が制御される。断続器はアネロイド気圧計で、気球が1〜1.5km上昇すると発振器の電源を一時的に休止させる。これにより、観測者は気球の高度(観測高度)を知ることができる。
帝国陸海軍の高層観測
帝国陸軍は気象観測に熱心で、1932年(昭和7年)から高層気象観測用ゾンデの研究を開始し、1933年(昭和8年)には、観測の基本である気圧・気温・湿度を測定する各ゾンデを開発した。
これらのゾンデは、各測定項目のデータを発振周波数の変化に置き換えて送信するが、掲示した海軍の3要素ゾンデの発振周波数は、気圧(高度)が14〜17MHz、湿度が20〜23MHz、温度が24〜31MHzである。
ゾンデ発信装置
当時のゾンデは、その観測目的に応じてセンサー部は異なるが、信号送信部は共通した構造で、通常、直熱式三極管によるハートレー発振回路で構成されていた。電源は超小型の蓄電池で、高圧発生にはブザー方式を用い、交流高圧出力をそのまま発振管の陽極に加えた。
この発振回路は1測定項目専用で、気圧・温度・湿度の3要素を観測するゾンデでは、独立した3組の発振回路を装備するが、ブザー電源部は共通であった。
発振周波数
ラジオゾンデの発振周波数帯は陸海軍によって異なり、また、大戦期にはVHF帯も使用されていた。
海軍の普及型である九七式高層気象観測用ゾンデの場合、気圧測定には14〜18MHz、湿度測定には20〜23MHz、また、温度測定には24〜30MHzが使用された。一方、陸軍のラジオゾンデは海軍とは異なり、主に8〜12MHzを使用した。
センサーの構造
・気圧測定
本測定部は、薄いアルミ製密封式中空円盤に小型の可変蓄電器を取り付けた構造で、高度に従って気圧が低くなると円盤が膨張し、可変蓄電器を回転させて発振周波数を変化させる。
・湿度測定
本センサーは、人間の頭髪を複数本まとめて弦状に張り、中央部に可変式蓄電器を取り付けた構造である。湿度による頭髪の伸び縮みにより蓄電器が回転し、発振周波数を変化させる。使用する髪はフランス人女性の金髪が最良とされているが、事の真偽は不明である。
・温度測定
本検知器は、細いタリュウム入り水銀温度計に金属の筒を被せて蓄電器を構成したもので、温度の変化により水銀柱が動くと静電容量が変化し、発振周波数が変化する。
・雲測定
この種のゾンデは、陸軍では甲・乙・丙の3器種に大別される。甲型は昼間測定用で、バイメタル輻射計を用い、太陽輻射と大気散乱輻射の合計を測定する方式である。
乙型は、甲型の感度不足を補うために開発された昼間測定器で、光電管を装備し、光量によって測雲を行う方式である。本器は周波数変調方式で、搬送波(約19MHz)を光量により50〜300Hzで変調し、受信機には復調した低周波音を周波数に置き換える周波数計が装備されていた。
丙型は、光電管と豆ランプを組み合わせ、その間の光の減衰を検知して測定を行う夜間測定用ゾンデである。測定信号の発信は乙型と同一で、周波数変調方式が採用されていた。
-(261 KB)先般、ネットオークションで、水戸陸軍飛行学校に関わる写真を複数枚入手した。この中には、機上用通信機材「94式飛2号無線機」の地上運用実習や、模擬銃による対機射撃訓練などの写真が含まれており、誠に興味深い。このため、参考資料として、その一枚を掲示した。
陸軍航空隊における通信担務要員の育成
陸軍における本格的な航空無線教育は、1919年(大正8年)に開始された「航空術練習委員」による教育に端を発する。
その後、1925年(大正14年)に下志津陸軍飛行学校として独立すると、同校は偵察学生に対する無線通信教育および無線通信を専修する将校・下士官の養成を担うなど、陸軍航空部隊における航空無線教育の中心的機関となった。
1930年代に入ると、航空部隊における通信任務は空対地通信にとどまらず、部隊間の地上通信にも拡大し、航空通信聯隊や航空情報隊などの地上勤務部隊が新設された。これに伴い通信要員の需要が増加したため、1937年(昭和12年)には無線通信教育を主目的とする水戸陸軍飛行学校が設立され、1939年(昭和14年)には、その内部に通信教育を専門とする航空通信学校が設置された。
太平洋戦争の勃発後は、通信担務要員の大量養成が急務となり、航空通信聯隊、航空情報聯隊、航測聯隊、気象聯隊などが補充要員の教育・養成を担った。特に航測聯隊は、方向探知機による航空機の航路誘導を専門とし、短期間の教育・養成を経た部隊が大陸および南方戦線へ派遣された。
さらに1944年(昭和19年)には、航空部隊用レーダーに関する教育を統合的に行う電波兵器講習部が創設され、地上用および機上用の電波警戒機・電波標定機に関する教育が開始された。
このように陸軍の航空通信教育は、下志津における航空無線教育を起点として、通信・情報・航法・気象、さらにレーダーへと教育分野を拡大し、戦争の拡大に伴って 大規模な通信要員養成体制へと発展した。しかし、戦局の悪化により教育機関自体も次第に作戦部隊化され、1945年(昭和20年)の終戦を迎えた。
「94式飛2号無線機」補足
本機は、陸軍が1936年(昭和11年)に実施した第三次制式制定作業において兵器化した、機上用通信機材である。
当初、94式飛2号無線機は、対地通達距離600km(電信)の中型航空機用機材として開発された。しかし、通達距離1,000kmの大型航空機用機材である「14号無線電信機(94式飛1号無線機予定)」は、重量および容積が過大となり、制式化の上申を行うことができなかった。
このため、94式飛2号無線機は中型・大型航空機に搭載されることとなり、通達距離1,000kmの問題については、運用周波数の選定によって解決することとなった。以後、94式飛2号無線機は、第三次制式制定における唯一の中・長距離通信用機材として、単座戦闘機を除くすべての航空機に搭載された。
94式飛2号無線機諸元
用途: 中・大型航空機用
通信距離: 600〜1,000km(電信)
運用周波数: 送信1,500〜7,500kHz、受信1,500〜7,500kHz
電波形式: 電信(A1)、電話(A3)
送信機: 出力電信20W、電話10W、水晶又は主発振UX-865、電力増幅UX-865 x2並列使用
変調機: 音声増幅UZ-89、陽極変調UZ-79(三極部P.P.)
受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段(UZ-77)、周波数変換(Ut-6A7)、中間周波1段(UZ-78)、オートダイン検波(UY-37)、低周波増幅1段(UZ-41)
電源装置(送受兼用): 入力24V、回転式直流変圧器、当初は風車発電式
空中線装置: 固定逆L型、又は40m垂下式、地線は機体接地構成
-(280 KB)先般、標記無線機材の送信機用電源をNet Auctionで入手した。99式飛5号無線機は、大戦後期に導入された陸軍航空部隊の中型爆撃機用二系統通信機材である。
99式飛5号無線機の電源は、送信機用、受信機用の独立した直流回転式発電機二台により構成されている。当館は本機材の電源を所蔵しておらず、また、出品物は発電機二台であったため、送受信機用電源一式かと喜んだ。しかし、よく見れば、同一の送信機用電源二台であった。
入手した電源の1台は、機体への装着板が欠落していたが、他は両機共に原状を維持していた。「99式飛5号無線機」は殆ど実用されることの無かった無線機材であるため、いずれの電源も軍に於いては未使用であったと考えられる。
「99式飛5号無線機」補足
本機材は第4次制式制定作業で兵器化された陸軍中型爆撃機用の二系統通信機材であり、後方指揮所との対地通信及び各編隊指揮官機との通信を目的として開発された。
装置は送信機一台及び同一構造の甲、乙受信機二台により構成されている。送信機の同調回路は二重構造となっており、一挙動の切替えにより二周波数を運用することが出来る。
運用時、受信機甲及び乙は該当する甲、乙周波数を同時に受信するが、通常、甲周波数は後方指揮所との通信用に、乙周波数は各編隊指揮官機との連絡用に使用された。
なお、本機の導入は大戦後期であり、このため戦況の変化もあって、二系統通信機材として運用される機会は殆ど無かったものと考えられる。
99式飛5号無線機諸元
用途: 中距離航空機用、二系統通信
通信距離: 500km
周波数: 送信(2周波切替)2,500〜13,000kHz、受信 2,500〜13,000kHz
電波型式: 電信(A1)、変調電信(A2)、電話(A3)
送信機: A1出力25W、水晶発振 UY-807A、電力増幅 UY-807A、陽極変調 UY-807A
受信機(二台): スーパーヘテロダイン方式(Ut-6F7×5)、高周波増幅二段、中間周波増幅一段、低周波増幅一段、BFO機能付、AVC機能付(原型)
中間周波数: 450kHz
送信電源: 入力24V直流回転式変圧器
受信電源: 入力24V直流回転式変圧器
空中線: 逆L型固定式(柱高0.8m)、垂下式、地線は機体接地
-(289 KB)FL-2A05Aは、戦前にドイツのテレフンケン社が開発したセミバリアブルミュー特性を有する万能五極管「NF-2」を国産化した帝国海軍向けの真空管である。本管は主として、航空部隊の大型機に搭載された「零式空4号無線帰投方位測定機」の構成管として使用された。
残念ながら当館は「零式空4号無線帰投方位測定機」を所蔵していないが、資料として構成管であるFL-2A05Aだけでもぜひ入手したいと長らく考えていた。このため、今般の入手により長年の懸案の一つがようやく解決し、誠に幸いである。
なお、「零式空4号無線帰投方位測定機」の原型であるテレフンケン製Peil G-5(軍用名EZ-2)は、民間航空機用方向探知機として我が国を含む各国の大型航空機で使用され、世界一周飛行を行ったニッポン号にも装備されていた。
FL-2A05Aの導入
戦前、帝国海軍航空部隊はドイツ・テレフンケン社製の機上用方向探知機EZ-2を輸入し、これを「T式空4号無線帰投方位測定機(テ式空4号)」として制式化した。本機は96式陸上攻撃機や一式陸上攻撃機などの大型機に搭載されたが、装置は万能五極管NF-2一種類のみで構成されていた。
その後、国際情勢の緊迫化によりテ式空4号の輸入が困難となったため、1940年(昭和15年)頃に急遽国産化が図られ、「零式空4号無線帰投方位測定機」(零式空4号)として制式化された。この際、構成管であるNF-2も日本無線により併せて国産化されたものと考えられる。
それまでNF-2は汎用管として国内に流通していたため、国産型も当然その管名を引き継いだ。しかし、海軍向けには「FL-2A05A」の管名が付与され、同一の真空管に対して二つの管名が併存することとなった。
新鋭真空管への管名の付与
海軍航空技術廠は1940年(昭和15年)頃から、各種無線装置の生産性および整備性の向上を目的として統一規格化の研究を進めていた。併せて使用する真空管についても統一が図られ、送信管として発振管「FZ-064A」と電力増幅管「FB-325A」が、受信管として万能管「FM-2A05A(注:FL-2A05Aではない)」が開発された。
このうちFM-2A05Aは、テレフンケン社のNF-2を参考に日本無線が開発した、セミバリアブルミュー特性を有する万能五極管である。
型番の「F」は航空機用、「M」はオクタルベース、「2」はフィラメント電圧12V(6Vの2倍)、「A」は万能管、「05」は五極管1組、最後の「A」は開発順序を表す。
このため、FL-2A05Aの管名も同様の方針に基づいて付与されたものと考えられるが、ベース形状を表す「L」が何を意味するのかは判然としない。
なお、新規に開発されたFM-2A05Aはボタンステム構造を採用した五極管であり、精巧な電極構造を有することから生産性に劣る真空管であった。このため戦時下における大量生産には適さず、間もなく東芝が開発した万能五極管「ソラ」に置き換えられた。
FL-2A05A(NF-2)補足
本管はトップグリッド型のセミバリアブルミュー五極管である。ステムはバンタムステム構造で、ベースは外側に突出した8個の端子による接触型である。寸法は全長103mm、最大直径38mmであり、同系統のST管UZ-6D6の全長122mmと比較するとかなり短い。また、外面にはメタルコーティングが施されている。
規格
線条電圧:12.6V
線条電流:200mA
陽極電圧:200V
陽極電流:3mA
第一格子電圧:-2V
第二格子電圧:150V
gm:4000℧
なお、本管のベース構造の正式な呼称については判然としないが、P型として記述される例も見られる。P型は1935年頃にPhilips社が開発した外周接触式の8端子構造であり、このことからFL-2A05Aの形式名における「L」は、このP型ベースを指している可能性がある。
海軍「零式空4号無線帰投方位測定機」諸元
用途:大型航空機
測定項目:一般受信(単一方位確定)、手動受聴式、航路計式、A/N復調式
運用周波数:長波165〜400kHz、中波400〜1,000kHz
電波形式:A1(非変調波)、A2・A3(変調波)
受信構成:ストレート方式、空中線合成・位相反転回路、高周波増幅3段、検波、低周波増幅1段、唸発振(BFO)、AGC機能付、構成管FL-2A05A×6
電源装置:直流回転式変圧器
空中線装置:方位測定用回転式枠型空中線(ループアンテナ)、補助垂直空中線(センスアンテナ)兼通信用固定空中線、機体接地
T式/零式空4号補足
本方位測定機は、受信機本体、ループアンテナおよびその回転器、通信用空中線を兼ねるセンスアンテナ、管制器ならびに電源装置などによって構成されている。機上での運用は、一般受信、手動受聴式方位測定、航路計式およびA/N復調式による帰投方位測定(ホーミング)である。
また、本方位測定機は、受信同調や方位測定に関わる一切の操作を、ワイヤーケーブルを介して接続された管制器により遠隔操作で行う。さらに、方位測定に必要なループアンテナの回転操作についても、管制器と同一位置に設置された枠型空中線回転器によって行われる。
-(240 KB)先般、横浜市泉区の泉川遊水地で開催されたジャンク市にて、マツダが1930年代の初頭に開発したと考えられる五極送信管「UV-1083」を通称「香水商店」より購入した。店主は、著名な収集家である香水清久氏である。
この時代、送信管は四極管が主流であったが、本管には陽極より放射される二次電子に起因する負性抵抗特性が存在した。この現象は「ダイナトロン特性」とも呼ばれ、寄生振動の原因となっていた。
このため、1930年代の初頭より、二次電子を抑圧する第三電極を備えた五極送信管の開発が進められ、今般入手したマツダ製UV-1083は、その先駆けとなった中型電力増幅管である。
本管は、1934年(昭和9年)より逐次実施された陸軍の第三次制式制定作業において、軍通信隊用の中距離通信機材「94式2号甲無線機」を構成する送信機の電力増幅管として使用された。また、開発が中止された機材での使用例には、第四次制式制定に向け研究が進められた「超重無線機」がある。
しかし、「94式2号甲無線機」は制式化後、間もなくして不整備となり、今日まで現存機が確認された例はない。「不整備」とは、追加生産および配備が行われなかったことを示唆する。その意味でも、今般、本機材を構成した送信管UV-1083を入手できたことは、誠に幸いであった。
ところで、驚いたことに、このUV-1083を使用した自作A級アンプの映像がYouTubeにアップされていた。もっとも、音質はあまり芳しくないようである。
https://www.youtube.com/watch?v=io4sWAqlWKA
UV-1083諸元
線條電圧: 10V
線條電流: 6A
陽極電圧: 2,000V
第2格子電圧: 500V
第3格子電圧: 0V
第1格子電圧: +40V
陽極電流: 132mA
相互コンダクタンス: 1,100µ℧
許容陽極損失: 200W
最大入力: 300W
冷却方式: 大気自然冷却式
「94式2号甲無線機」補足
本機は、1934年(昭和9年)より暫時実施された第三次制式制定作業において制式化された軍通信隊用の中距離通信機材であり、定格通信距離は200kmである。無線装置は、54号A型送信機、発動発電機式電源、配電盤、27号型受信機2台、送信機の遠隔操作装置および空中線装置等により構成され、運搬は基本的に自動貨車1輌で行った。
送信機の運用周波数は950〜7,500kHz、電波形式は電信専用であり、送信出力は100〜150Wである。受信機には、陸軍通信部隊の上級機材を構成した27号型受信機2台を装備した。
94式2号甲無線機諸元
用途:軍通信隊
電波型式:電信(A1)
通信距離:200km
運用周波数:送信950〜7,500kHz、受信140〜15,000kHz
送信機:出力100〜150W、水晶または主発振UY-510A、電力増幅UV-1083
送信機電源:2.4馬力単気筒ガソリン発動発電機
受信機:27号型2台、スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段、中間周波増幅1段、低周波増幅2段
受信機電源:乾電池
空中線装置:逆L型、柱高10m、水平長20m以下、地線20m裸線4条、単独受信空中線装置不明
遠隔運用装置:5号A型操縦機、5号A型中継器
運搬:基本自動貨車1輌
開設撤収:兵6名にて20〜30分
総重量: 700kg
-(270 KB)今般、ネットオークションにて標記の送信機を入手した。地3号無線機は第四次制式制定作業において兵器化された陸軍航空部隊の近距離用対空・対地通信機材であり、本機には原型・中期型および後期型の3機種が確認されている。
当館は本無線装置を構成する原型および中期型送信機は所蔵しているが、大戦末期に導入された後期型送信機は未入手であった。本型の送信機については長年入手を画策していたが、今日までその機会がなく、また実物を検分したこともなかった。このため、本機材の収集を完了させるべく、今般は無理をしてこれを落札した。
さて、入手した送信機は同調コイルが欠品していたが、他に大きな不具合はなく、程度としては良好の部類であった。しかし、末期型機材であるため、簡素化が顕著で、また配線も粗く、予想はしていたものの、若干驚かされた。とはいえ、これにて地3号無線機に関わる送信機の収集は完了し、誠に幸いであった。
なお、地3号無線機各型の送信機は、構造に若干の差異があるものの、回路構成に大きな違いはない。しかし、後期型では、各部が大幅に簡略化されている。
地3号無線機補足
本機は陸軍航空部隊の近距離用対空・対地通信機材であるが、実際には軽便な汎用機材として各部門で広く使用された。本機は中型航空機による輸送を考慮して設計されており、構成装置各部は小型軽量で、必要に応じて人力による運搬も可能であった。
送信機回路構成
本機は発振、電力増幅方式で、変調は電力増幅管の第1格子変調ある。運用周波数は1,500〜6,675kHzで、この周波数帯を差替式コイル3本で対応するが、発振段及び電力増幅段を構成する同調コイルは、同一ケースに収容されている。
発振は五極管UZ-6D6によるピアスGP水晶発振回路であるが、水晶片を取外すと単一コイルによる陽極同調型発振回路として動作する。また、装備する水晶片は航空部隊用の「飛号型発振具」である。
電力増幅段はビーム管UY-807A二本の並列使用によるC級増幅回路で、制御バイアス電圧は高圧電流帰還回路で発生させる半固定式である。タンク回路は蓄電器により陽極高圧回路より切り離された並列給電構成であり、同調確認用のネオン管が装備されている。
電力増幅管の陽極電圧は600Vで、送信出力はA1が40W、A2・A3は8Wである。タンク回路の出力側コイルの片側は接地され、空中線同調回路を併せ構成する。
発振、増幅、空中線各段の同調回路は独立した可変式蓄電器により構成され、同調機構はバーニアダイアル方式であるが、後期型では簡略化され、ツバ付ノブによる直接回転式に変更された。
空中線同調回路は片線接地式タンク出力コイル、インダクタンス切替式空中線延長コイル、同調用可変蓄電器及び高周波電流計より成り、接地型空中線同調回路を構成する。本回路は電流饋電方式により、全運用周波数帯を基本1/4波長で固定空中線に同調させる。
地3号無線機の運用形態は、第四次制式機材に共通して、電信は電鍵操作によるブレークイン方式、電話は電鍵操作による変則的なプレストーク方式である。
地3号無線機諸元
用途: 対空・対地通信
通信距離:100km
送信周波数: 1,500〜6,675kHz
電波型式: 電信(A1)、変調電信(A2)、電話(A3)
送信機構成: A1出力40W、A2・A3出力8W、水晶又は主発振UZ-6D6、電力増幅UY-807A x2並列構成、第1格子変調UZ-6D6
送信機電源: 0.6馬力発動発電機、交流式電源
送信空中線装置: 逆L型、柱高6m、水平長20m、地線は地網2枚
受信周波数: 1,500〜8,900kHz
受信機構成: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段(UZ-78)、周波数変換(Ut-6A7)、中間周波増幅1段(UZ-78)、オートダイン・再生式検波(UZ-78)、低周波増幅1段(UZ-78)
中間周波数: 450kHz
受信機電源: 直流回転式変圧器及び6V蓄電池
受信空中線装置: 直操時は送信空中線と共用、遠操時用は不明
-(285 KB)今般、浜松陸軍飛行学校が1939年(昭和14年)に作成した標記の資料を入手した。九四式飛二号無線機は1936年(昭和11年)に実施された第三次制式制定作業において兵器化された大型・中型航空機用無線機材であり、本取扱法はその運用教育の補助資料として使用されたものと考えられる。
帝国陸海軍の航空部隊に共通して、機上無線機に関わる取扱説明書は非常に少なく、今般の入手は誠に幸いであった。当館は九四式飛二号無線機の構成機材を各種所蔵するが、送信機は未所蔵である。願わくば、この流れで送信機も是非入手したいものである。
九四式飛二号無線機について
第三次制式制定作業において、本機(研究名15号無線電信機)は当初、対地通信距離600km(電信)の中型航空機用として研究され、重爆撃機等の大型機用については、同時期に開発が進められた通信距離1,000kmの14号無線電信機(予定九四式飛一号無線機)が予定されていた。
しかし、14号無線電信機は重量および容積が過大となり、制式化が困難な状況となった。このため、15号無線電信機が中型・大型航空機に搭載される運びとなり、通信距離1,000kmの問題は運用周波数の選定により解決することとなった。
本経緯により、九四式飛二号無線機は第三次制式制定作業における唯一の中・長距離通信用機材として、単座戦闘機を除く全ての航空機に搭載された。
九四式飛二号無線機参考資料「翼の凱歌」
本作品は1942年(昭和17年)に公開された東宝製作の戦争映画である。ストーリーは、操縦士であった父を墜落事故で失った兄弟が、それぞれ陸軍のエース・パイロット、テスト・パイロットへと成長する物語である。
この映画の撮影には陸軍航空本部が全面的に協力し、登場する一式戦闘機の飛行には実機が使用された。また、一式戦闘機のテスト飛行場面では、対空通信を行う九四式飛二号無線機が、実際の通信操作を再現した状況で頻繁に登場する。
[https://www.youtube.com/watch?v=M1OjPJ8mCLY](https://www.youtube.com/watch?v=M1OjPJ8mCLY)
九四式飛二号無線機諸元
用途:中・大型航空機
通信距離:600〜1,000km(電信)
運用周波数:送信1,500〜7,500kHz、受信1,500〜7,500kHz
電波形式:電信(A1)、電話(A3)
送信機:A1出力20W、A3出力10W、水晶または主発振UX-865、電力増幅UX-865×2並列使用
変調機:音声増幅UZ-89、陽極変調UZ-79(三極部P.P.)
受信機:スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段(UZ-77)、周波数変換(UT-6A7)、中間周波1段(UZ-78)、再生検波(UY-37)、低周波増幅1段(UZ-41)
電源装置(送受兼用):入力24V、直流回転式変圧器、当初は風車発電式
空中線装置:垂下式、固定逆L型(要空中線延長コイル)、地線―機体接地
-(272 KB)先般、対を成す標記モーターをネットオークションで入手した。本機は、回転機構の角度指示や情報伝達に使用される多相回転機であるが、帝国海軍の射撃管制用レーダーでは、セルシンを仰角・方位角の測定部に装備し、各指示角の自動伝送を行っていた。
地味な製品ではあるが、当館(横浜旧軍無線通信資料館)では資料として、帝国陸海軍が使用したセルシンを長年探していたものの、今日まで入手の機会がなかった。このため、製造は戦後であるが、戦前・戦中のセルシンと同一構造の物を取りあえず入手した。
到着した落札物は、発信機、受信機および給電用トランスの一式であるが、確認すると、なぜか受信機の指示針取付け用の軸が折れていた。そう簡単に折れるものではないが、ネットオークションのことであり、これも致し方ない。
取りあえず懸案が一つ解消し、幸いであった。
セルシン補足
セルシンは、回転軸の位置を検出する多相回転機の総称であり、JISにおける呼称は「シンクロ電機」である。
本機は、回転子側に一次コイル、固定子側に120度間隔で放射状に配置された3個の二次コイルを有する回転変圧器であり、角度検出には発信機および受信機の2機を対で使用する。
発信用セルシンの回転子に交流電流を流すと、誘導により固定子の3個の二次コイルに正弦電圧が発生する。この電圧を受信側セルシンの二次コイルに、併せ交流電圧を回転子に加えると、受信機の回転子は発信機の回転子の角度に同期して回転する。
-(285 KB)既に掲示のとおり、先般自動車・内燃機関修復家である内和雅仁氏により、当館(横浜旧軍無線通信資料館)が所蔵する「地3号無線機」の送信機用発動発電機、及び米国海軍の移動無線機「TBX」を構成する発動発電機の修復が完了した。
これに続き、今般陸軍航空隊の「地2号無線機」の送信機を構成する発動発電機の修復作業が始まった。既に発電装置は分解済みで、各部の補修作業が始まっており、間もなくして動作時の様態に復帰すると考えられる。
前回もそうであったが、当掲示板では動画を掲示することが出来ず誠に残念である。当館は周知活動の主軸をFacebookに移して久しい。先に修復が完了した発動発電機の動画もFBにアップ済みである。
このため、FBにアクセスが可能な方は、是非お訪ね願いたい。
-(281 KB)先般、久しぶりに有線通信機材である「移動式印字電信機」を入手した。当館(横浜旧軍無線通信資料館)は無線通信資料館であるため、有線通信機材の収蔵には力が入っていないが、「移動式印字電信機」は陸軍の野戦でも使用された基本的な有線通信機材であるため、資料として必要であった。
入手した「移動式印字電信機」は、本体を収容する木箱は失われていたが、装置自体の程度は良好で、また送受信に際して線路に流れる電流の確認を行う検流計の可動指針部も付属しており、誠に幸いであった。これまで各種の類似電信機を検分してきたが、指針部が揃っている電信機に巡り会ったことはなく、初めてその構造を確認することができた。
これら有線電信機の基本は、電鍵、一次電池電源、通信路、検流計、有極継電器で構成されるループ回路で、電鍵を叩くと通信回路に電流が流れ、対向の有極継電器が動作する。有極継電器は二次電源電池および電磁石式印字機、または音響器(サウンダー)により信号受信回路を構成し、印字または音響により通信電信符号を再生する。
印字式電信機には各種があるが、その代表機材は逓信省が使用した「逓信省型標準印字電信機」である。本機は逓信省が管轄した有線電信部門の殆どの端末で使用されたが、その導入は明治初期であり、以降変わることなく昭和初期まで使用された。
今般入手した「移動式印字電信機」は「逓信省型標準印字電信機」の小型版で、その基本構造および動作は同一であるが、出力は印字方式のみで、サウンダー用出力回路は備えていない。
なお、帝国陸軍は今般入手した「移動式印字電信機」と同一構造の電信機を野戦で使用したが、当該物品が陸軍の調達品であったのかは不明である。
-(272 KB)この度、東京都武蔵村山市在住の石川清治殿より、陸軍の「94式3号甲・乙無線機」を構成する受信機の、同調コイル4本をご寄贈いただきました。
石川殿のご高配に、心より感謝申し上げます。
現在、石川殿は陸軍航空部隊の汎用受信機である「ム-65受信機」の修復に取り組まれており、その作業はほぼ完了しております。当館は本修復に関し、若干の資料を提供した経緯があり、その完成を楽しみにしております。
「94式3号甲・乙無線機」
本機材は、陸軍通信隊の可搬式無線機材であり、軍通信隊、師団通信隊、ならびに騎兵部隊(車両編成偵察部隊)において広く使用された傑作無線装置です。このうち、3号乙無線機は、同一構造の受信機で構成された副受信装置を装備し、主として師団通信隊で使用されました。
94式3号甲無線機(36号型通信機)諸元
用途:騎兵部隊、軍通信隊
通信距離:80km
周波数:送信 400〜5,700kHz、受信 350〜6,000kHz
電波形式:電信(A1)
送信機:出力10W、水晶または主発振(UY-510B)
送信機電源:29号手回発電機
受信機:スーパーヘテロダイン方式
高周波増幅1段、中間周波増幅1段、再生式検波、低周波増幅2段
使用真空管(UF-134、UZ-135、UF-134、UF-109A、UZ-133D)
中間周波数:270kHz
受信機電源:乾電池 B-18型(22.5V)×4、平角3号(1.5V)、C-129(−3V)
空中線:逆L型(柱高7m、線条20m、地線20m〈被覆線〉)
副受信機(別掲):53号C型、1939年(昭和14年)頃 不整備
運搬:駄馬2頭
開設・撤収:兵6名にて10〜20分
整備数:650機
-(289 KB)この度、電子管の研究家として知られる岡田章殿より、下記の品々をご寄贈いただきました。岡田殿には、日頃より当館(横浜旧軍無線通信資料館)が必要とする各種真空管をご提供いただいており、平素からのご高配とご協力に対し、心より感謝申し上げます。
御寄贈品
☆ 発振管 BK-20(日本無線製)二本(うち一本は元箱入り・試験表付)
☆ TR放電管 B-3(マツダ製)
☆ 高圧整流管 KX-142(理研製)
上記のうち BK-20 は、独逸ドレスデン工科大学の教授バルクハウゼン(Barkhausen)と助手クルツ(Kurz)により発明された Barkhausen–Kurz 振動管(BK 振動管)です。当館ではこれまで BK 管を所蔵したことがなく、今般のご寄贈により、長年の念願であった同管を入手することができ、誠に幸いに存じます。
また、TR放電管 B-3 は、帝国陸軍の後期型 VHF レーダーにおいて、受信機入力回路を強力な自送信波から保護するために用いられた送受信切替管であり、今日では誠に貴重な陸海軍レーダー関連資料です。
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新年明けましておめでとうございます。
本年が皆様にとりまして、幸多き年となりますよう、心より祈念いたします。
2026年 元旦
横浜旧軍無線通信資料館
土居 隆